仕事も恋も、何もかもうまくいかない...年齢に関わらず誰でもそんな時期がありますよね? この状態、実は「考え方や言葉遣いを少しだけ変えれば解消できる」と、女性のための人材育成塾を主宰する朝倉千恵子さんは言います。そこで、朝倉さんの著書『仕事も人生もうまくいっている女性の考え方』(あさ出版)から、ちょっとした工夫で充実の日々を過ごせる「美意識と処世術」について、連載形式でお届けします。
ジブリ映画の人気を支えていためんどうな作業
「大事なことは、たいていめんどうくさい」
これは、『千と千尋の神隠し』『となりのトトロ』などの映画でおなじみ、スタジオジブリの宮崎駿監督がテレビ番組で語った言葉です。
宮崎監督は、アニメーション映画を1本製作するのに、2年もの時間をかけるといいます。
空を流れる雲や風にそっと揺れる花、きらきら光る水面など、登場人物だけでなく、背景のディテールまできちんと描く。それが、ジブリ映画です。
実際、番組内で作業の様子を紹介していたのですが、細かな作業の繰り返しで、素人の私が見ても「とてもめんどうくさい」ものでした。雑草の絵一つに対しても、緑の色を何色も見比べ、重ね具合を見るといった作業を何度もやり直し、色、形、濃淡等を調整されていたのです。
宮崎監督曰く、このめんどうな作業をおろそかにしてしまったら、描きたい世界観が不完全なものになってしまう。だから、「〝めんどうくさい〟っていう自分の気持ちと戦いながら」細部までチェックし、直していくのだとか。
たしかに、ジブリ映画の背景があっさりしていたら、映画の世界に入り込んだり、ストーリーに込められた深みや想いを味わうことはできなかったでしょう。すでに人気も実力も抜きん出ているにもかかわらず、めんどうをいとわないどころか、とても大事にしている姿勢に、あらためてジブリ映画のすごさを感じました。
「めんどうくさい」ことをやれば、いいことが起きる
彼の言葉は映画の話だけに限りません。
日々のこと、仕事や家事、育児、恋愛、人付き合い――。
人生における大事なことほど、めんどうくさいものです。
家で一人のんびり過ごそうにも、家族みんなで楽しく過ごそうにも、掃除、洗濯、炊事(食事の準備)、ゴミ捨てなどをしないと、快適に過ごすことができないどころか、病気になってしまいかねません。
育児も、子どもと遊ぶだけなら楽しいですが、時には叱らなくてはなりませんし、学校や塾、PTAとの付き合いなどといっためんどうも引き受け、対処することではじめて、子どもが成長する環境をよい状態にすることができます。
恋愛にしたって、ただ好きな人と一緒にいるだけならいいのですが、好きでいてもらうための努力、相手が幸せであるための努力をすることで、一緒にい続けることができます。
めんどうくさいことを一生懸命するからこそ、物事がよい方向に進むと言い換えることもできるでしょう。
仕事もそうです。
経営者として、人材育成ほどめんどうなことはありません。1回言えば終わり、1日研修をすれば、次の日から仕事が劇的にパワーアップするなんてことにはなりません。仕事内容、経験を加味しながら、毎日、何年も繰り返し伝えることで、ようやく一人前に育ちます。
忙しい日々、部下指導を後回しにして取り組みたいこともたくさんあります。でも、それでは社員は育たず、数年後、仕事のできない社員があふれ、会社自体が危うくなりかねません。社員をきちんと育てることができれば、数年後、安心して仕事を任せることができるようになり、社員に力があるので、当然会社も成長します。
日常で「ああ、めんどうくさいな」と感じたら、「つまり、これは、私にとって大事なことって意味なんだ」と、発想を切り替えましょう。
めんどうくさいことを、誰にも真似できないくらい努力して、徹底的にやり続ければ、確実にあなたの人生は変わります。
あなたの人間力が磨かれていくのです。
Hint『「めんどうくさい」の先には成長と幸せが待っている』
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