家族や友達、仕事仲間に頼み事をすると、「何だか悪いな」と思うことありますよね?でも、実は人に頼ることで「人とつながる」と、一人ではできないことに挑戦できたり、ワクワクできたり、自分にも周りにもいいことが起こるそうです。今回は、「人の助けを受け入れる力=受援力」の重要性を説く医師・吉田穂波さんの著書『「つらいのに頼れない」が消える本―受援力を身につける』(あさ出版)から、「人に頼るときの心構えと方法」について連載形式でお届けします。
厄介な、心の中の「でも」
人の力を借りたいと思ったけれど、なんとなく言い出せない――。そのときに頭に浮かぶ言葉は、「でも」ではないでしょうか?
「頼りたい。でも、自分でできないことが恥ずかしい」
「頼りたい。でも、みんな忙しいから。大変なのは自分だけじゃないから」
「頼りたい。でも、これは自分が任されたことだから」
こうした「でも」の後に続く頼れない理由はいくつでも出てきますが、それらは本当に正しいのでしょうか。
たとえば、「できないことが恥ずかしい」と考えてしまうのは、「できない=未熟」「できて当たり前」だと思っているからかもしれません。しかし、それは本当に〝誰でもいつでもできて当たり前〟のことなのでしょうか。
大人でも能力は人それぞれ、得意不得意があります。環境の違いもあるでしょう。現実には、ある仕事を軽々とできるときもあれば、家事や他の仕事の負担が大きすぎ、ベストを尽くしてもどうしてもできない場合もあります。「できて当たり前」というのは、社会や周囲から刷り込まれた思い込みである可能性があるのです。
この「でも」が浮かんだときは、自分の思い込みや前提を疑い、本当にそうなのか、じっくり考えてみましょう。
また、「大変なのは自分だけじゃない」「あの人のほうが大変だから」「みんな忙しいから」と考えられるのは、あなたの思いやりがあるからこそ。あなたが周囲の人を慮ることができる優しさを持っているのは、とてもすばらしいことです。
その優しい思いやりを、少しだけ自分にも向けてみませんか?
大変さやつらさの度合いは人と比べられません。自分がこれ以上はとても一人では無理だと感じたとき、「この負担や不安を感じているのが自分の大切な人だったら、何と声をかけるだろう?」と考えてみましょう。「頑張りすぎないで誰かに頼ったほうがいいよ」と言ってあげたくなったら、ぜひその言葉を自分にかけてあげましょう。
自分の責任感から、人に頼ることを躊躇する気持ちも、とてもよくわかります。
もう限界だと思っているにもかかわらず、「自分がしなくては」と思うのは、とても立派な心がけです。しかし、人に頭を下げることをよしとせず、何もかも一人ですることが正しいという、成長過程で刷り込まれた固定観念に縛られていないでしょうか。
自分一人でできるに越したことはありませんが、できないときだってあるのです。そういうときは、早めに自分の状況をさらけ出すほうが、後々のダメージが小さくてすみます。
自分の状況を客観視し、勇気を持って人の力を借りることも、強さです。「自分がしなくては」とはじめから終わりまで頑かたくなに思うのではなく、人に頼ったほうがいいときは、人に頼る強さを発揮しましょう。
心の強さとは考えを変えないことではありません。「これをしたい」というブレない軸を持ちつつも、自分のこだわりにしがみつくのではなく、思い込みや無意識の自己制御に気付き、逆境に対して柔軟に自分の対応を変えられる。心の強さとは、そんなしなやかさにあるのです。
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