大切な人が亡くなったとき、悲しみと慌ただしくさの中で多くの人は「何から手をつけていいかわからない」状態になるといいます。そこで、各分野の専門家が手続きやノウハウをわかりやすく解説した「まるわかり! もしもの時の手続き・相続 完全ガイド」(クロスメディア・パブリッシング)より、今から知っておきたい手続きや相続のノウハウを、連載形式でご紹介します。
まずは遺言書の有無を確認する
遺言書の有無は相続の手続きに大きな影響を与えます。故人が遺言書をのこしていないか、探し方も含めて確認しましょう。
●遺言書の有無を調べる
遺言書がある場合、故人の意思により法定相続分とは異なる配分で財産を配分したり、相続人ではない人に財産を分けたりすることができます。遺言書の存在を知らされていなかったとしても、遺言書がのこされている可能性はあります。故人が大切なものをしまっていた保管場所などを調べて、遺言書がのこされていないか確認しておきましょう。
遺言書にはいくつか種類があります。遺言書の内容を全て自分で書き保管する「自筆証書遺言」、公証役場にて公証人の前で遺言を作成する「公正証書遺言」、遺言書の内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場に証明してもらう「秘密証書遺言」の3つです。
遺言書を公正証書遺言としてのこしている場合には、「公証役場」に遺言書の原本が保管されています。最寄りの公証役場で遺言検索を行うことができるので、調べてみましょう。
また、2020年7月10日から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まります。そのため、この制度の開始以後は、法務局に自筆証書遺言が保管されている可能性もあります。あわせて調べてみましょう。
遺言書が保管されている可能性のある場所は?
・自宅:自宅のタンスや引き出し、金庫、仏壇、本棚など
・貸金庫:取引のあった銀行の貸金庫に預けられていることもある
・信託銀行:生前に信託銀行との取引があったら、連絡を取ってみる
・公証役場:最寄りの公証役場に連絡すれば、全国どこの公証役場に預けられていても確認できる仕組みになっている
・法務局: 自筆証書遺言は、2020年7月10日以降、法務局で保管されている場合もある
・その他:知人、付き合いのある専門家に預けていることもある
<公証役場で遺言を検索する方法>
期限:なし
手続き先:公証役場
手続きする人相続人、相続人の代理人
必要なもの:
死亡を証明する書類(死亡届、戸籍謄本のコピーなど)
相続関係を証明する書類(戸籍謄本)
手続きする人の本人確認書類
●遺言書を見つけた場合はどうする?
故人が亡くなったあと、遺品整理などをして自筆証書遺言書が発見された場合には、発見者はその遺言書を開封してはいけません。遺言書が見つかった場合には、開封せずに家庭裁判所へ持って行き遺言書の検認をしてもらう必要があります。
遺言書には、財産をどのように分けるかなど非常にデリケートな内容が書かれています。遺言書を発見した人にとって都合の悪い内容が書かれていた場合、それを偽造や改ざんするといったリスクも少なからずあるため、裁判所で検認の手続きを取り、開封する際には相続人の立ち会いが必要なのです。
●遺言書に遺言執行者が記載されている場合
「遺言執行者」とは、簡単に言うと遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。各金融機関での預金解約手続き、法務局での不動産名義変更手続きなど、遺言の内容を実現するための一切の行為をする権利と義務があります。ただ、遺言書に遺言執行者が記載されていても、その方が遺言執行者の職に就任するとは限りません。
相続人や受遺者は、遺言書で指定された方に連絡を取り、遺言執行者の職に就任するか否かの照会をするといいでしょう。遺言執行者が記載されている遺言書の例を確認しておきましょう。
遺言書が見つからないと故人の意図とは異なる相続を行うことになります。生前故人が重要な書類を保管していた場所や貸金庫などに遺言書が保管されていないか確認するようにしましょう。