老後資金に「2000万円の準備を...」と言われても、すぐに作れる人はなかなかいません。そこで、社会保険労務士歴20年の岡久さんが著した『2000万円もってないオレたちはどう生きるか―60歳からのリアル』(自由国民社)から、老後の不安を解消できる60歳からの生き方のヒントを連載形式でお届け。人生のシミュレーション、今こそやるべきです。
日常生活費、臨時出費、遊興費の三つが基本支出
「定年シニア=ゆとり」のイメージからすると、子どもが独立して預貯金もそれなりにあり、現役の時より収入が減っても日々の生活には困らずに暮らしていける保有資産があるはずと考えられがちです。
しかし実際には、五十代の三人にひとりが預貯金ゼロ、さらにその上の六十代でも七十代でもほぼ同じ割合で預貯金を持たない人がいるとされています。さらに四割の人が五百万円以下としています。
巷では日本人の平均貯蓄額二千万円というウソのような金額が喧伝されていますが、これは資産を有している人の平均金額で、莫大な資産家が少しでもいれば自ずと高額になるわけです。
それに対して、資産を持たない人も含めた平均金額となると約一千万円ほどになり、少し"肌感覚"に近い感じになりますが、いずれにしてもシニア世代でも資産ゼロ層がかなり存在するということなのです。
ですから、シニア世代で実際に資産を持たなくても悲観的になったり落ち込んだりする必要はありません。
まず、定年シニアの生活にはいくら必要で、どのくらいの収入があり、支出はどの程度かを確認することから始めます。
最初に出費を三種類に分けて算出しますが、通常の日常生活費はほぼ固定されているはずですね。
食費や光熱費、通信費、住宅費などですが、シニア世代になればだいだいの金額は想像がつくはずです。
食費だとスーパーなどの一ヵ月分のレシートを確認したり光熱費なら口座引き落としの金額をチェックしたりすると把握できます。食費ならひとりで何人前も消費できるはずもないので、年間を通してそれほど変わりはありません。
二番目は臨時出費で、医療費や慶弔費などがそれにあたります。突発的な出来事で急な出費が発生しますが、それは一時的なものですからそれほど大きな負担にはなりません。これは、預貯金を取り崩して賄うことも可能です。
寒くて寂しい"さむさみしい"老後にならないために
最後は趣味や旅行、外食などの遊興費です。一見無駄な費用で節約したほうがよいと考えがちですが、これは間違いです。
若い頃からこれまで苦労して働き、やっと定年を迎えてホッとできる年齢になったのですから、自分にご褒美を与える意味でも計上したほうが心のゆとりが生まれます。
会社を定年退職し子どもも独立し、身近に意欲を掻き立てるものがないからこそ、遊興してやる気や生きがいを再発見するという意味では大切なことです。
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