姉妹兄弟とのケンカはNG!介護に立ち向かうための家族マネジメント

親などの介護に奮闘することで、仕事を辞めてしまう「介護離職」。しかし、介護をきちんと続けるには、「自分第一で考えること」が重要だとされています。そこで、介護支援の専門家・飯野三紀子さんが執筆した、『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』(方丈社)から、仕事を続けながら介護と向き合う方法について、連載形式でお届けします。

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家族のマネジメント:親戚・兄弟とのすれ違い

介護の大変さは、やってみないとわかりません。ですので、初期段階から気持ちを合わせるため、兄弟姉妹全員がそれぞれ親と一週間暮らしてみて、それからキーパーソンを決めるぐらいでちょうどいいのです。

ですが、なかなかそうはいきません。例えば親の認知症の初期では、発症を否認する子供が出てきます。

近くに住む子供には、親のおかしな言動が見えても、心配して訪ねてきた遠くの長男の前では、親に気合が入り、しっかりしゃんとしているので、

「えーっ、おふくろ元気じゃないか」
「そうじゃないわよ。この間なんか道に迷ったし、卵ばかり買ってくるし」
「そりゃ歳だからそんなこともあるだろう。じゃあな」

という場面。

長子が大切にされる家族文化のなかで、母親にかしづかれて育った長男は、母親の認知症をなかなか認めません。

仕事しながら親と同居している妹のところに遠くから兄がきた場面。

「おかしいわよ、お父さん。このごろ話が通じないの。私が仕事に行っている日中、ぼーっとしているのよ。私にばかり押し付けていないで、兄さんもう定年なんだから、いっしょに暮らして」
「なに言うんだ。今日はいっしょに落語に行ったけど、おかしいところなんてなかったよ。うちは狭いし、親父ひきとれないよ」

性急すぎる会話で衝突する例です。

親子、兄弟はその数だけ多様なので、こういう会話をしても、つぎのときは仲良く笑っているという家族もあれば、一回の対立で一生、口も聞かない関係になる家族もあります。

また、兄弟姉妹のなかには、親が元気なうちはいい人でいて、親が認知症を発症したり、亡くなったとたんに、非人間的なほど計算高くなる人がいます。

性格も違う、仕事も生き方も、家族の構成も、家庭の事情もちがう兄弟姉妹が、親の介護に一致団結して協力しあうためには、作戦が必要です。

家族のマネジメント:女性が介護すべきは通らない

自分の親を働いている妻に介護させて、離婚を突きつけられた夫の例は、よく見聞きします。

三人の子を育て、パートで働いて、家事をして、その上に夫の親の介護。疲れた、体力的にもう無理だと訴えても、夫は「母親のオムツの始末なんてできない」と言い、夜遅くまで帰ってこない。休日も一日中、趣味の釣りにいってしまう。夫婦の役割に疑問を感じた妻はついに離婚に踏み切りました。

自分の親は自分がキーパーソンとなって介護する時代です。配偶者はその協力者の位置でしかありません。それが現代の介護家庭です。それを証明するように、妻や父母の介護をする男性は、全介護者の30%を占めるようになりました。

高齢の男性は、だいたいは家事にうといので、料理、家事を習って介護にあたっています。男性介護者の会もでき、体験を語り合い、情報交換をし、料理教室、飲み会などを開いて、交流をしています。

しかし、家族経営の自営業、農業をしているなど大家族の家庭では、嫁が中心となって介護をし、みなが手伝ってなごやかに暮らしているところもあります。

大家族の誰かに、さりげなく見守られる環境では、認知症の進行もゆっくりです。友人の認知症の母は、発症から五年、畑の草取り、作物の選別、芋の皮むきなど、得意の仕事をして、重宝がられながら、元気に穏やかに過ごしています。

古き良き環境が残っていることを、うらやましく思います。

家族のマネジメント:家族会議

介護と仕事の両立は、決して甘くはありません。兄弟姉妹がいる場合、平等に分担して助けてもらいたいのは当然です。

キーパーソンの苦労が、兄弟姉妹が二人なら二分の一、四人なら四分の一で済むはずなので、仕事との両立のためには、兄弟姉妹の分担はぜひお願いしたいところです。

ですから介護が必要とわかったとき、すぐに兄弟姉妹や介護に協力してくれそうな親戚に知らせて、心の準備をしてもらいましょう。

メールなどで写真やコメントを共有するのも大切ですし、動画、写真で報告するのも手です。

ドロドロに溶けたアイスばかりがつまった冷蔵庫、おもらしした玄関、ぐちゃぐちゃな室内、などショッキングな写真が、実はものすごく有効です。

キーパーソン候補は、とにかく最初から、自分の驚き、悲しみ、混乱を、ほかの家族と共有すべきです。

つきあいの薄かった兄弟姉妹がいれば、自分の介護への考え方、介護をいれての人生設計を語りあうことも必要でしょう。そうやって、できるだけの理解を得ておきます。

そのうえで、じっくり介護の問題点を洗い出して、作戦を立て、ときには兄弟の誰かを味方につけるネゴシエーションをして用意万端で、家族会議を開きましょう。

その他の「介護と仕事を両立させる本」記事リストはこちら!

51jkcHLCo3L._SX337_BO1,204,203,200_.jpg「がん終末期」「認知症」といった状況の違いも踏まえ、13章にわたって介護問題の原因と対策がまとめられています

 

飯野三紀子(いいの・みきこ)

(社)介護離職防止対策促進機構 理事。ウェルリンク(株)にて「介護とこころの相談室」を立ち上げ、現在、専任チーフコンサルタント。企業の人事部経験を経て、人材紹介会社で、キャリアコンサルタントとして従事。2000年に母と2人で叔母の介護と看取りを経験。その後、母親が認知症発症、同時期に親友のうつ病介護が重なり会社員生活を断念。自身のキャリアを見直しフリーランスとして独立。心の問題を扱うべく大学で心理学を学び直し、現在は、要介護4の母を在宅介護しながら、働く人の「心の健康」と「介護と仕事両立」のための支援を行なっている。5人の介護と4人の看取りを経験。ココロとカラダのケアラボ主宰。

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『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』

(飯野三紀子/方丈社)

「介護離職」「介護うつ」「家族間ギャップ」など、介護にまつわるあらゆる問題の解決方法が分かる「介護の指南書」。家族や親友など5人の介護と4人の看取りを経験し、悩み抱える多くの人々を支援してきた著者が、実体験に基づく実践的な介護の心得を示しています。「人生100年時代」とも言われる現代、誰にでも訪れる「介護」に備えるべし。

※この記事は『仕事を辞めなくても大丈夫! 介護と仕事をじょうずに両立させる本』(飯野三紀子/方丈社)からの抜粋です。

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