縁起でもないこととはいえ、ある日突然親の死に直面する可能性はだれにでもあります。そのときに困るのが親の死後のお金の問題。遺産は前もって内容を知っておかないと、手続きに膨大な時間がかかったり、負債を抱えてしまう可能性も...。親が元気なうちにしっかり把握しておきたい相続問題のあれこれ。ぜひ、知っておきましょう!
『レタスクラブ』2018年11月号で特集された記事をご紹介します。
親の死に面したとき、首尾よく対処できる人はなかなかいません。例えば、よく耳にする話が「父親が突然倒れ、入院。意識を取り戻す間もなく亡くなってしまった。お金の管理は父が行っていたため、遺産が把握できず相続手続きがたいへんだった」というもの。
親が祖父母から引き継いだ故郷の古い一軒家を持ち続けている場合も。山や竹やぶを持っていることも...
そこでまず知っておきたいのは、親が亡くなったあとの具体的なスケジュールについて。葬儀のほかにも公的な届け出や遺産分けの準備など、家族には悲しむ時間もありません。なかでも最大のヤマ場は財産のリスト作りと分け方。事前に調べておかないと、イザというときたいへんなことに!
お通夜から四十九日以降まで、法律や税金、その他の手続きを知っておきましょう。
把握しておこう、親が亡くなったあとのスケジュール
上のスケジュール表の内容を詳しく解説します。
お通夜~初七日"非常に忙しい"
【法律・税金の手続き】
・死亡届けの提出(7日以内)
・年金受給停止の手続き(死後は速やかに。国民年金は14日以内)
★遺族年金の申請手続き
(残された家族の生活資金。振り込まれるまでに4カ月ほどかかるので、早めに申請を)
・遺言書の有無の確認
・健康保険の資格喪失手続き
・介護保険の資格喪失手続き、切り替え手続き など
【その他の手続き】
・葬儀の手配
・病院への支払い
(預金者が亡くなったことを金融機関が知ると預金が引き出せなくなるので、あらかじめ必要額を準備しておきたい)
・財産や借金の調査
・生命保険の受け取り申請
1カ月~3カ月"心労のピーク"
【その他の手続き】
・公共料金の契約者変更、引き落とし口座変更
・運転免許証の返還
・クレジットカードの解約
・携帯電話、プロバイダーの解約 など
★財産や借金の確定
★遺産分割協議
遺言書がない場合は、遺産の分け方を相続人全員で話し合って決める。それまでにすべての財産や借金を調べておく必要がある。
3カ月以降
【法律・税金の手続き】
★相続放棄の手続き(3カ月以内)
財産より借金が多いときは、3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し出る。
・準確定申告(4カ月以内)亡くなった人の所得税の申告
・相続税の申告・納付(10カ月以内)
(相続税がかかる場合は時間との戦いになる。できるだけ早く専門家に相談しよう)
【その他の手続き】
★預貯金の口座や株式などの名義変更
(名義を変更しないと預金などを引き出せない。さまざまな書類や相続人全員の署名・なつ印(実印)が必要で、手続きはとても面倒)
・不動産の名義変更
・相続税の申告の準備、納付する税金の準備
キーパーソンは「相続の仕切り人」
葬儀の手配だけでも大変なのに、実は法律・税金の問題は親が亡くなった時点で発生します。あらかじめ知っておきたいのは「預貯金などは原則として本人以外は引き出せない」ということ。そのためにも、親が元気なうちから決めておきたいのは「相続の仕切り人」だと誌面では指摘しています。誰が入院や葬儀の費用を立て替えたり、手続きを進めるリード役になるのか、あらかじめ話し合って決めておきましょう。
さて、あなたの家では、誰がキーパーソンになるのでしょうか。
次の記事「遺産をアテにしてるわけじゃないけれど。「両親の財産」を把握するために踏むべき3つの段階とは(2)」はこちら。
取材・文/有山典子 イラスト/前田はんきち