1999年に『パラサイト・シングルの時代』という著書が出版されてから約20年。当時若者だったパラサイト・シングル達は中年に。彼らの親世代は60歳~70歳となっている現在、多様化する結婚の形や生き方に親世代はどのようなことをし、心得ておくべきなのでしょうか。
「親と同居の中年未婚者」や「高齢化する婚活問題」について、『パラサイト・シングル』の著者であり、中央大学文学部教授である山田昌弘先生に伺いました。
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未婚者が増える最大の要因は
若年男性の収入不安定化
「いまは誰でも正社員になれる時代ではありません。企業は正社員を最小限に減らしています。新卒者を一括で採用し、そのとき採用されなかったり、途中で退職してしまうと、後から正社員になるのは難しくなってしまいます」(山田先生)。その一方で、非正規雇用で働く人は増えています。「非正規雇用の人の収入は、正社員より低い場合がほとんどです。1人暮らしをすると、生活費の負担が大きい場合があるため、親と同居するパラサイト・シングルが多くなるのです」(山田先生)
〇20歳代・30歳代の男性は年収が高いほど結婚しやすい」
○「20歳代・30歳代の未婚男性は年収300万円未満が多い」
実際の20~30歳代の未婚男性の年収を見てみます。上図のように、年収が300万円未満の男性は、20歳代で約70%、30歳代で47%に上ります。ところが、年収300万円未満の男性のうち、結婚している人は、20歳代でも30歳代でも10%に達していないのです。「20、30歳代ともに、年収が上がると既婚率も上昇傾向です。男性の年収と結婚には、密接な関係があります」(山田先生)
女性が結婚したいのは高収入の男性
日本には「結婚後の家計は男性が支えるのが当然」という意識が根付いています。男性に経済力を求めるのです。それには女性側の事情も絡みます。女性の半数が非正規雇用だといわれ、収入の不安定な人が男性以上に多いのです。また、十分な収入のある正社員の女性も、自分より高収入の男性を結婚相手に望む傾向があります。
女性の場合、収入が安定した男性が現れるまで、親と同居して待つケースが目立ちます。「親と同居していれば、自分の収入以上の快適な生活が送れます。結婚後にその生活水準を下げたくないという心理が働き、収入が不安定な男性に魅力を感じないのです」(山田先生)
しかし、安定した収入を得ている男性は限られています。そのため、女性は結婚したいと思う男性に、なかなか出会えません。男性は、収入が不安定だと結婚相手として女性から選ばれにくいのです。結果的に、結婚しないまま「中年パラサイト・シングル」になる男女が増えています。親も、娘が収入の不安定な男性と結婚するのを望まず、それならパラサイト・シングルのままでいいと思う人が多いのです。
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取材・文/松澤ゆかり
山田昌弘(やまだ・まさひろ)先生
中央大学文学部教授。東京大学文学部卒業。専門は家族社会学。近著に『底辺への競争』(朝日新書)がある。