中小企業は親の面倒を看ながら働く人への理解が乏しい?/介護破産(15)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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「介護休業を取得しやすい環境になったといってもそれは大手企業の話で、中小はまだまだ。実際に私が働いていた職場では、介護休業を取得できるような環境ではなく、親の面倒を看ながら働く人に対しての理解は乏しかった」(渡辺さん)

退職してからの渡辺さんの生活はこうだ。
起床は朝3時頃、6時半頃までに父親の朝食をつくり、食べさせる。自分の食事は後回し。その後、昼食と父の話し相手。午後1時半頃には入浴介助。夕食の用意や母の話し相手をして午後10時頃に就寝。

父は要介護5。特別養護老人ホーム(特養)への入所基準は満たしているが、父は認知症のうえ、腎臓が悪く、人工透析を定期的に行なう必要があった。さらに、食事も施設が提供する普通食が食べられず、腎臓病の人向けに塩分など栄養分を調整しなければならない。受け入れ態勢が整わないとの理由で、施設への入所はかなわなかったそうだ。デイサービスに通うにしても、食事は持ち込まなければならず、それならば自宅で介護したほうがいいと、週4回、訪問介護(ホームヘルプ)を頼った。トイレに行くのも困難になり、夜間はオムツ対応にした。身体が大きい父のオムツ交換は母と二人がかりで行なった。

ある日の日記にはこのように記してあった。〈肛門にオムツかぶれができたので、洗浄と薬つけも二人で行なう(2013年1月)〉

介護の疲労が渡辺さんを襲う。たびたび自殺願望を抱くようになったが、ホテルの厨房で働いていたときの仲間、介護者の会での仲間の励ましが浮かび、踏みとどまった。「多いときで週に4回、病院に父を連れて行きましたが、身体を起こして車椅子に乗せるのは本当に力がいるんですよ。みかねた主治医が通わなくてもいいように訪問医を紹介してくれて、訪問看護も利用するようにしました。施設に入れない人を自宅で介護する方法は誰も教えてくれませんでした」(渡辺さん)

2014年2月に父は他界(享年81 歳)。現在は母(87歳)と二人で暮らすが、渡辺さんは体調を崩してしまい、仕事をすることができないという。

 

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

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