単身で年収383万円以上の人は介護保険サービスの自己負担は3割に。増え続ける70歳以上の医療費の自己負担額/介護破産(9)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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前の記事「介護費用が上がると家族の負担が増える/介護破産(8)」はこちら。

都内に住むトモコさん(仮名、63歳)も介護保険制度改正に翻ほん弄ろうされた一人。

夫(65歳)は9年前、仕事中に脳出血で倒れ、半身麻痺と失語症を患い特養で療養中。要介護4。病院で一命をとりとめ退院後は老人保健施設でリハビリを受けた。自宅での生活を目指していたが症状が悪化。だんだん足が動かなくなり特養に入所した。夫は不動産会社を経営しているので家賃収入があった。介護保険のサービス利用料が2割負担になり、特養の居住費、食費代の減免措置が外れ、1か月の費用は8万円から13万円になった。

このほかに多い月で約20万円かかるというのが医療費だ。「寝たきりの状態なので口腔ケアや、人工肛門をつけてから定期的に交換するので、これが月3~4万円かかります。検査や往診など、医療費は月20万円になることもあります」(トモコさん)

経営者なので休みはほとんどなく「倒れたのは過労が重なったのではないか」とトモコさんは振り返る。家族のために必死になって一代で財を築いたのに、ひとたび病に倒れれば国は非情な仕打ちをしてくる。「できるだけ長生きしてほしい」と願う家族の思いをよそに、さらなる負担増が押し寄せる。

2018年の介護保険制度改正で、単身で年収383万円以上の人は、介護保険サービスの自己負担は3割になることが確実視されているという。負担増の対象者は3%程度、年金生活者としてはかなりの富裕層だが、トモコさんの夫のように年金収入のほかにも収入がある人は介護費の負担増が予想される。

すでに2017年8月から70歳以上の医療費の自己負担上限額が引き上げられることが決まっている(図1 -3)。

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年収約370万円未満で住民税を払っている70歳以上の人(東京23区で単身の場合、年金収入だけなら年155万円以上)は、現在、医療費の自己負担上限額は外来だけの場合、月1万2000円だったのが、2017年8月には1万4000円にアップした。さらに、2018年8月には1万8000円になる。入院費(外来費込み、世帯で合算)も4万4400円から5万7600円に引き上げられる。それ以上支払った分は高額療養費制度で還付されるが自己負担は増える。

このほかにも、75歳以上の窓口負担を2割にする、福祉用具貸与・住宅改修を介護保険対象外にする、要介護度の軽い人向けの生活援助サービスを介護保険の対象外にする、といったことが最近まで議論されていた。

高齢者たちに負担を課しても、財源不足の解消にはならない。まさに焼け石に水。むしろ、介護をする家族の負担は金銭的にも肉体的にも減ることはない。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

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