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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。
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増える家族へのしわ寄せ
千葉県内に住むトシさん(仮名、90歳)もその一人。夫が他界して娘夫婦の家に身を寄せている。娘夫婦が外出するときなどは、トシさんは特養のユニット型個室のショートステイで数日間過ごす。費用は食費などを含めて1日約2500円。それが2015年8月からは1日約5000円に跳ね上がった。トシさんは月々の年金は少ないものの、夫が亡くなったあと、自宅を売却して得たお金が1000万円以上あったのだ。
トシさんのケアマネジャーがいう。「トシさんのショートステイの費用が、1日約5000円かかることを娘さんに説明しますと、『ショートステイは利用しない、自分たちが外出する機会を減らしてお母さんの面倒を看るしかない』とこぼしていました」
在宅で介護をする家族の負担が増えた結果となった。
2016年6月、公益社団法人「認知症の人と家族の会」(京都市上京区)は、「2015年の介護保険制度改定の撤回を求める要望書」を厚生労働大臣宛に提出した。同会では2015年末から各支部を通して、介護保険制度、介護報酬改定の影響について利用者と家族にアンケートを実施した。ホームページ上に公表している事例からは悲痛な叫びが聞こえて来る。
補足給付の対象から外れ負担増になった例
●月7万円の負担増。1か月18万円になり年金だけでは生活ができないため、パートに出ている(60代女性、要介護5の夫が特養に入所中)。
● 月11.3万円の負担増。夫が課税対象のため2段階から4段階に。毎月10万円不足し、貯金を崩さないと生活していけないが10年はもたない。食費を削るしかないが、健康に不安がある。いつまで生きられるか(70代男性、要介護5の妻が特養入所中)。
●ショート利用で月8000円の負担増。利用回数を減らした。このまま負担が増えると、生活が成り立たなくなる。国は在宅介護を勧めているようだが、介護家族は共倒れになる(60代女性、要介護2の夫を在宅で介護中)。
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(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)
長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。