高齢者介護をめぐる殺人などの事件は1週間に1回発生/介護破産(10)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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〝介護殺人″の悲劇をなくすためには

千葉県船橋市の住宅で、認知症だった当時73歳の妻を殺害した罪に問われた夫(80歳)の裁判員裁判で、千葉地裁は懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。報道によると、夫は2016年7月、船橋市の住宅で、認知症の妻の首を絞めて殺害して逮捕された。同年12月22日の判決で、千葉地裁は「長年連れ添った夫から自宅で就寝中に突然、命を絶たれ、その驚愕(きょうがく)や苦痛を考えると誠に哀れというほかない」「明確な殺意を持った残虐な行為」と指摘。いっぽうで、「妻に対する責任感や将来に対する絶望感などに押し潰されてとっさに絞殺したという、いわゆる老老介護に起因した殺人事件」であり、「被告は約8年間、ほぼ独力で被害者の介護を担い、愛情と責任感を持って世話していた」として、執行猶予付きの判決を言い渡した。

夫のSOSに周囲が気づき、手を差し伸べていたら救えた命だったかもしれない......。

2016年12月5日付の読売新聞が〝老老介護″に関して興味深いデータを報じた。2013年以降、高齢者介護をめぐる家族間の殺人や心中などの事件が全国で少なくとも179件発生し、189人が死亡していたことがわかったという。ほぼ1週間に1件のペースで発生して、70歳以上の夫婦の間で事件が起きたケースが4割を占めた。介護が必要な人が10年前の1.5倍の600万人超にのぼるなか、高齢の夫婦が〝老老介護の末に悲劇に至る例が多いと解説している。

今回の調査で、加害者のうち126人(70%)が男性だった。家事に慣れない男性のほうが思いつめやすい傾向が示された。また、被害者に認知症の症状が確認できた事件は71件(40%)だった。

 

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

 

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