家賃収入を見込んだ「退職金でアパート建設」の落とし穴/相続「やってはいけない」8ヵ条

わが家は仲がいいので遺産分割でもめるわけない――。そう考えている人も多いでしょう。しかし、いざ相続が開始すると、ちょっとした気持ちのすれ違いから摩擦が生じ、大きなもめごとに発展してしまうことがあります。そこで、株式会社タクトコンサルティング会長の本郷尚先生に「遺産分割で争わないために、やってはいけない8ヵ条」について教えていただきました。今回は「退職金で賃貸併用住宅を建てる」「介護費用」についての注意点をご紹介します。

家賃収入を見込んだ「退職金でアパート建設」の落とし穴/相続「やってはいけない」8ヵ条 1906_p035_01.jpg

■やってはいけない(7)
退職金で賃貸併用住宅を建てると危ない

自宅を賃貸併用住宅に建て替えて「家賃収入を老後資金にしよう」と考える場合もあるかもしれません。退職金を受け取るタイミングであれば、頭金も用意できます。相続税の節税にもつながります。

しかし、想定通りにならないことも。例えば、不動産会社が一括借り上げで30年の家賃保証をしていても、家賃の金額までは保証されていないのが一般的です。定期的に家賃が見直され、引き下げが行われれば、資金計画が大きく狂います。老後資金の確保どころか、住宅ローンの返済さえ難しくなり、不動産を手放すことにもなりかねません。

「アパートを建てたり、賃貸併用住宅などにしたりすれば、相続税の節税につながりますが、節税=リスクが増えるということも理解しておいた方がいいでしょう」(本郷先生)。

次にもう一つ。介護にまつわる注意点をお伝えしましょう。


■やってはいけない(8)
介護費用は明細を残さないと疑われる

介護中の親と同居している相続人は、親のお金の管理を慎重にしないと、ほかの相続人にあらぬ疑いをかけられることがあります。

例えば、介護用のベッドをレンタルした、週に2回の通院の際にタクシーを使ったなど、積み重なると大きな金額になることがあります。それを親の預貯金から支出するのは問題ないでしょうが、ほかの相続人はその事情を理解していません。

相続の際に「もっと預金があったはずだ」などと疑われる可能性もあるのです。同居していた相続人にしてみれば介護で苦労した上に疑われたのでは納得できません。
「親の預金などから支出したときは、記録を残しておくのがいいでしょうね。家計簿につけておいてもいいですし、レシートを残しておくのもいいでしょう」(本郷先生)

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取材・文/向山 勇 イラスト/山崎のぶこ 

 

<教えてくれた人>

本郷 尚(ほんごう・たかし)先生

1947年生まれ。1973年、税理士登録。1975年、本郷会計事務所開業。現在、株式会社タクトコンサルティング会長。著書に『改訂新版 女の相続 ~SIX STORIES~』『笑う税金』『こころの相続』など。

この記事は『毎日が発見』2019年6月号に掲載の情報です。

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