本当の老いとは「学ばない」こと。参考にしたいフランス流の「老後の学び」

歳を重ねるとともに増えていく、病気、孤独、お金などの不安...。世界共通の悩みと思いきや、「フランス人」は老いることを「人生の収穫期」と考えて、楽しく過ごしているそうです。外交官から仏修道会の介護ボランティアに転身した賀来弓月さんの著書『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(文響社)から、フランス流の「人生を前向きにとらえる10のヒント」を連載形式でお届けします。

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本当の老いとは「学ばない」こと

イタリア移民の三代目だというフランス人ボランティアが私に教えてくれたイタリアの詩人の言葉があります。「人が学ぶ能力を失ったときに老いが始まる」(Lavieillesse commence au moment ou une personne a perdu sa capacite d'apprendre)」(アルトゥロ・グラフ1848~1913)。人生100年の時代。

60歳で「老後」と考えると残り40年、70歳で「老後」と考えても残り30年あります。30年あれば、何かをはじめて習得するのに十分な年月です。

フランスの高齢者たち、特に中産階層以上の人は、定年後も意欲的に何かを学びたいと考え、実際に新しいことに挑戦している人が多かったように思います。高齢になっても、「人間は精神的に成長できる、また成長しなければならない」と考えているのです。国民の平等意識の強いフランスには「教育における年齢平等」という考え方があり、これが高齢者の学ぶ姿勢と意欲を支えています。

私が出会ったフランス人も、さまざまな形で定年退職後の学習を実践していました。中には、フランスの最高の高等教育機関コレージュ・ド・フランス(College deFrance)で聴講している人もいました。ここでは、内外の超一流の学者たちの歴史、文学、哲学、科学、社会科学、美術などあらゆる分野の講義を聴講することができます。近年はインターネットでも聴講が可能になっています。また、フランスをはじめ欧州では大学の講義を無料公開する動きも盛んです。

フランスには、「France Culture」という知的水準の高い番組を有するラジオ放送を聞いて、政治、経済、哲学、文学、芸術、科学など各分野の知識と理解を深めている定年退職者も多い。「ラジオ放送番組はフランスの重要な国家的文化遺産である」と考えられており、何十年前に放送されたラジオ番組もしばしば再放送されています。

フランスの各都市には、多くの大中小、官民の美術館、博物館、図書館などがありますが、例えば、パリには100近くの博物館・美術館があります。これらに足繁く通い、学ぼうとする高齢者も少なくないのです。

フランスの人たちは、定年後も新しいことを学ぶことに喜びを見いだしていました。体系的に何かを学ぶことで、加齢による頭脳の機能退化と心の萎縮を防止できると信じています。

日本にも無料の学びの場は多くあります。人はいくつになっても成長できますから、ぜひ自分の興味のある分野で新たな学びに挑戦したいものです。目標ができると、孤独感を感じている暇はなくなります。さらに、学びの場を通じて、他の高齢者仲間との新たな出会いも生まれることでしょう。

『人が学ぶ能力を失ったときに老いが始まる』
La vieillesse commence au moment ou une personne a perdu sa capacite d'apprendre.

フランス人に学べば老後は楽しくなる!『60歳からを楽しむ生き方』記事リストはこちら!

051-syoei-france.jpg「美しさとは何か」「オシャレの楽しみ方」「孤独の捉え方」など10の項目から、老いを楽しむフランス人の人生観が分かります

 

賀来弓月(かく・ゆづき)

1939年、愛知県生まれ。1960年外交官上級試験合格、61年名古屋大学法学部卒、外務省入省、英オックスフォード大学大学院留学(外務省在外上級研修員)。外務省退職後、清泉女子大学非常勤講師、NPO法人アジア近代化研究所特別顧問。主な著書に『内なるものと外なるものをー多文化時代の日本社会』(日本経済評論社)など。

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『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』

(賀来弓月/文響社)

年齢を重ねると孤独感や焦燥感、死への恐怖心にさいなまれる…。そんな不安を、フランス人が考える「老いの愛し方」で払拭してくれる一冊。フランスの高齢者がオシャレや食事をどう楽しんでいるのか、その生き方を見習えば、老いも光輝く人生の一部になるはず。

※この記事は『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(賀来弓月/文響社)からの抜粋です。
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