「保険よりも現金」資産の考え方がガラリと変わる老後の三分法とは/一生お金に困らない(7)

不確実な支出は確実な原資で賄うべし

さて、三番目の支出、(3)医療・介護等費用です。

前の二つとの大きな違いは、この支出だけは自分でコントロールすることができないということです。

将来、病気になるかどうかは誰もわかりません。

同じように自分が要介護状態になるか、あるいは最後は高齢者施設へ入居することになるか等々、いずれも今の時点ではわからないことだらけです。

しかも、仮に医療や介護の費用が発生したとしても、その金額がどれぐらいになるかは不確実です。

ただ、医療だけは高額療養費制度がありますし、この制度は高齢になるほど本人負担が少なくなる(民間の保険とは逆です)ようになっていますから良いでしょうが、介護の場合はどれぐらいの期間になるのかわかりませんし、ひょっとしたら認知症になる可能性だってあります。

もちろん、これらの費用が一切必要ない場合もあります。

つまり、場合によっては老後の支出の中で最大かつ最も不確実なものが、この「医療・介護等費用」なのです。

したがって、私はサラリーマンの退職金や、自分でこれまでに蓄えてきた、ある程度まとまったお金があるのなら、これらの費用を賄うにはそれを充てるべきだと思っています。

なぜなら、「不確実な支出だからこそ、今、手元にある確実なお金で賄うべきだ」と思うからです。

ところが、評論家やFP(ファイナンシャルプランナー)の中には「退職金を運用して増やしましょう」とか「退職金は取り崩しながら運用すべきです」という人達もいます。

私はこの考えには反対です。

投資や資産運用というのは結果が不確実なものです。

若いうちに将来に備えて投資をするのであればそれは大切なことですが、60歳になり、人生の後半戦に入ってから、将来のリスクである病気や介護に備える原資を運用のリスクにさらすべきではないと考えるからです。

老後はできるだけ現金を持っておくべし

さらに「病気や介護のリスクには保険で備えるべきだ」という人もいますが、この考えにも私は反対です。

保険の本質というのは「自分の蓄えで賄えないような巨額の支出というリスク」に対応するものです。

したがって、子供が大きくなって独立した後の巨額の生命保険は不要ですし、医療保険にしても高齢化することで病気のリスクが高まる分、保険料は高くなります。

ところが、公的な制度である高額療養費制度を使えば、自分で賄えないほど巨額の支払いが生じるわけではありません。

介護の場合も同様です。

したがって、必要なのは自分で賄えるお金をある程度持っておくことです。

保険というのは滅多に起こらないけれど、もし起こったらとても自分のお金では賄えない場合に入るものですから、ほとんどの場合は掛け捨てになるのは当然なのです。

したがって、保険に入り過ぎるというのはお金のムダであって、そんなお金があるのなら、それは貯金にしておくべきでしょう。

老後に大切なのは「保険」ではなくて「現金」なのです。

【最初から読む】保険に入りすぎてはいけない理由

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「保険よりも現金」資産の考え方がガラリと変わる老後の三分法とは/一生お金に困らない(7) 165-c.jpg前半3章でお金に対する考え方や知識を、後半3章で実際のお金をどう扱うかの具体的な年代別戦略モデルを資産運用のプロが徹底解説しています

 

大江英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表。CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャルプラニング技能士。大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金法が施行される前から確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。主な著書に『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版)『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などある。

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※この記事は『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごし方』(大江英樹/すばる舎)からの抜粋です。

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