世界の美しさに気づく! 体の老いとともに60歳から手に入る新しい「時間の感覚」

歳を重ねるとともに増えていく、病気、孤独、お金などの不安...。世界共通の悩みと思いきや、「フランス人」は老いることを「人生の収穫期」と考えて、楽しく過ごしているそうです。外交官から仏修道会の介護ボランティアに転身した賀来弓月さんの著書『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(文響社)から、フランス流の「人生を前向きにとらえる10のヒント」を連載形式でお届けします。

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体の老いと心の老いは違う

人の顔と心に皺ができる年齢はまちまちです。60歳で「年をとっている」と見える人もいれば、85歳になっても「年をとっている」と見えない人もいます。

チェコの作家フランク・カフカの言葉に「幸福は老いを忘れさせる」(Le bohneursupprime la vieillesse.)というものがありますが、体の老いと心の老いは違います。つまり、体の老いと心の老いは違うのです。

とはいえ、高齢期の後半には、多くの高齢者はさまざまな試練を受けます。

まず、心身能力の衰えです。自由のきかなくなった手足の痛みです。若いときには、病気や怪我をしたときにしか感じなかった痛みや苦しさを始終感じるようになります。

ジャン・ドゥラクール(1890~1985フランスの鳥類学者)は、少々卑猥で辛辣なことを言っています。「若いときには4つの柔軟な肢体(手足)と硬直したもうひとつの肢体をもっている。ところが、高齢になると、4つの硬直した肢体(手足)と柔軟なもうひとつの肢体をもつことになる」

つぎに、五感が鈍くなります。物事をよく忘れる。新しいことがよく記憶できない。
さらに、配偶者との死別の悲しみがあります。生きながら、たびたび死を意識するようになるのです。

あれやこれやとさまざまな試練を味わいながら、多くの高齢者は「老いを生きるのは人間の生きることの内で一番難しい」(ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世)ことをつくづくと感じるようになります。

そこで、同時に心まで老いると、「意味の危機」を迎えることがあります。日本人は、すぐに悲観する傾向がありますし、先述した通り、人に苦しみを打ち明けにくい。そのため、苦悩を一人で抱え、「意味の危機」に陥りやすいように思います。「もう死んでしまいたい」、そんなことを思ってもおかしくありません。

私は、そんなふうに「意味の危機」を感じている高齢者に対して、「時間に対する新しい姿勢」を身につけてほしいと思っています。

ジャン・ノハン(1900~1981 仏作家・作詞家)は、「若い世代は生きる空間を求める。高齢者世代は生きる時間を求める」(La jeunesse veut l'espace : lavieillesse, le temps)と言っていますが、日本では、定年直後の人は、むしろあり余る時間を生きるための空間(居場所)は求めます。

しかし、幸いなことに、年を重ねていきながら、高齢者は「時間に対する新しい姿勢」を身につける力があります。それは、「時間が早く過ぎて行く」と感じる中、生きている各瞬間を一層楽しむことができる力です。以前は見過ごしてきた日常生活の小さなことに喜びを感じ、感謝することができます。ちょっとした人間同士のふれ合い、自分を取り囲む自然の神秘的な美しさに感じ入ることができるのです。

フランスのわが親友故ルネ・ペルシェ氏は、始終、「年をとるということ、それは生きるということだ。年をとりながら、生きる喜びを見つけましょう」(Vieillir, c'estvivre. Trouvons la joie de vivre en vieillissant)」と、口にしていました。年を重ねるごとに、私達は生きる喜びを一層感じる力を得るのです。

『年をとるということ、それは生きるということだ。年をとりながら、生きる喜びを見つけましょう』
Vieillir, c'est vivre. Trouvons la joie de vivre en vieillissant.

フランス人に学べば老後は楽しくなる!『60歳からを楽しむ生き方』記事リストはこちら!

051-syoei-france.jpg「美しさとは何か」「オシャレの楽しみ方」「孤独の捉え方」など10の項目から、老いを楽しむフランス人の人生観が分かります

 

賀来弓月(かく・ゆづき)

1939年、愛知県生まれ。1960年外交官上級試験合格、61年名古屋大学法学部卒、外務省入省、英オックスフォード大学大学院留学(外務省在外上級研修員)。外務省退職後、清泉女子大学非常勤講師、NPO法人アジア近代化研究所特別顧問。主な著書に『内なるものと外なるものをー多文化時代の日本社会』(日本経済評論社)など。

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『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』

(賀来弓月/文響社)

年齢を重ねると孤独感や焦燥感、死への恐怖心にさいなまれる…。そんな不安を、フランス人が考える「老いの愛し方」で払拭してくれる一冊。フランスの高齢者がオシャレや食事をどう楽しんでいるのか、その生き方を見習えば、老いも光輝く人生の一部になるはず。

※この記事は『60歳からを楽しむ生き方 フランス人は老いを楽しむ』(賀来弓月/文響社)からの抜粋です。
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