「この勝負、勝つしかないっすからね」がんに侵された僕へ、あるボクサーからの言葉/僕は、死なない。(31)

「病気の名前は、肺がんです」。突然の医師からの宣告。しかもいきなりステージ4......。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる治療法を試してもがき続ける姿に......感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。21章(全38章)までを全35回(予定)にわたってお届けします。

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僕は打開する方策をさらに講じた。

できることは全てやるんだ。

生き残るために、やれることは全てやる。

『引き寄せの法則』という本を数冊購入した。

引き寄せ、という言葉は以前から知っていたし、そのようなものがあるかもしれないということは何となく思っていた。

よし、〝がんが治る〟という状態を引き寄せるんだ。

僕は引き寄せ関連の本を含めて何度も読み返した。

本には「意図を明確に持つ」と書いてあった。

意図?

意図なら明確に持ってるぞ。

僕は治る。

絶対に治る。

この戦い、負けるわけにはいかない。

治るしかないんだ。

そう思っていたし、強い意図を持っていたはず。

しかし体調はどんどん悪くなる。

これはいったいどういうことなんだろう?

まだ足りないのか?

もっと意図を強く、強く持つんだ。

4月になった。

ついにあれから7カ月経った。

とりあえず、7カ月生きている。

治ってはいない。

昨晩は胸が重く、苦しくなったが、身体を起こすと楽になった。

ネガティブな思いに心が囚われる。

朝方は特にそうだ。

でも信じるんだ。

それを超えて行く力が自分にあることを。

しかし、ホントにトコトン、ギリギリのところまで追い込んでくれるよなぁ。

これも自分にとって大切な経験かもしれないけれど、正直キツイ。

僕に耐えられるんだろうか?

すぐに弱音を吐きたくなる。

でも吐く相手がいない。

余計なことを言って妻や家族に心配かけられない。

弱音を吐く相手がいないということも、いいことなのかもしれない。

言葉に出さずにいられるから。

あと、どのくらい生きられるのか?

本当に治るのか?

がんは治ってきているのか、それとも広がっているのか?

誰か、教えてほしい。

4月に入って、ボクシングの教え子の一人、長嶺選手が前日本チャンピオンの土屋選手と一緒に会いに来てくれた。

僕たちは駅で合流し、近くにあるスターバックスに入った。

長嶺選手は、僕が休んでいる間に強敵を連破し、日本ランキング1位にまで登り詰めていた。

タイトルマッチも間近だろう。

土屋選手は1カ月前まで日本王者だったボクシング界では有名な選手。

2人は僕の病状を心配して聞いた。

「刀根さん、体調はどうっすか?」

「ああ、まあまあかな」

「痩せましたね」

「うん、9キロくらい落ちたかな。今はバンタム級(52.1〜53.5キロ)だな。減量しないでバンタムになっちゃったよ」

嗄れた声でそう言ったものの、すぐにゲホゲホと咳き込む。

吐き出した痰は血で染まっていた。

「大丈夫っすか?」

「大丈夫。僕は治るから。僕は自分が治るって確信してるんだ。2人とも、引き寄せって知ってるかい?」

僕は本で読んだことをさっそく説明しようとした。

「いえ、わからないです」

長嶺選手が答えた。

「実はね、こうやって目に見える机とかコップとかも全部素粒子からできてるんだ」

「素粒子っすか?」

土屋選手が不思議そうにコップを見た。

「そう。素粒子。このコップもすっごく小さなものまで見える顕微鏡で見ていくと、最後は原子になって、さらに見ていくと、もっと小さい素粒子になるんだ」

「なんだか昔、理科で習ったことある気がします」

真面目に長嶺選手が答える。

「そんでね、よく見るとね、その素粒子ってくっついてるんじゃなくて、間があいてるんだ。隙間があるんだよ。だから実は物質ってスカスカの空間だらけなんだよ。これは量子力学ではもう普通のことなんだ」

「スカスカっすか?」

2人とも不思議そうにコップを見た。

「そう。それとね、面白いことに素粒子ってのはね、現れたり消えたりしてるんだ。ぱっと出てきて、ぱっと消える。だからそういう視点で見るとね、このコップはないんだよ」

「......?」

「それとね、素粒子って観察する人の意志を反映するんだよ。観察する人がこっちに出ると思うとそっちに出る。消えるって思うと、消える」

「はぁ?」

「つまりね、何が言いたいのかって言うとね、僕たちのこの身体もコップと同じ素粒子でできてんじゃん。だから、自分の意図をちゃんと持てば、身体の素粒子もその意図に従うと思うんだ。だから治るって強く思えば、治るんだよ。これが自分の身体の遺伝子スイッチを、オンにするってことだと思うんだ」

「やっぱ気持ちっすよね」

2人はうなずいた。

「そうそう、最後はそこだな。それと素粒子の世界はみんなつながってるから、自分の意図に合った出来事が引き寄せられてくると思うんだ。これが引き寄せってヤツかな、僕が思うに」

「なるほど。この勝負、勝つしかないっすからね」

土屋選手が勝負師の目になって、力強く言った。

「そう、負けは許されない。だから治るって強い意図を持つんだ。勝つしかないから」

2人は別れ際に「刀根さんは、絶対に治ると思います」と言った。

そう、絶対に治るんだ。

勝つしか道はないんだ。

次のエピソード:次巻の発売まで僕は...「がん」を忘れさせてくれたマンガに巡る思い/僕は、死なない。(32)

【まとめ読み】『僕は、死なない。』記事リスト

shoei001.jpg50歳で突然「肺がん、ステージ4」を宣告された著者。1年生存率は約30%という状況から、ひたすらポジティブに、時にくじけそうになりながらも、もがき続ける姿をつづった実話。がんが教えてくれたこと」として当時を振り返る第2部も必読です。

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。OFFICE LEELA(オフィスリーラ)代表。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。その後、人気講師として活躍。ボクシングジムのトレーナーとしてもプロボクサーの指導・育成を行ない、3名の日本ランカーを育てる。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかり、さらに両眼、左右の肺、肺から首のリンパ、肝臓、左右の腎臓、脾臓、全身の骨に転移が見つかるが、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。現在は、講演や執筆など活動を行なっている。

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『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』

(刀根 健/SBクリエイティブ)

2016年9月、心理学の人気講師をしていた著者は、突然、肺がん告知を受ける。それも一番深刻なステージ4。それでも「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる代替医療、民間療法を試みるが…。当時50歳だった著者の葛藤がストレートに伝わってくる、ドキドキと感動の詰まった実話。

この記事は『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』(刀根 健/SBクリエイティブ)からの抜粋です。

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