50歳前後から発症率が増加するがん。ただ、現代では早期治療をすれば生存率が高まるデータがあり、実際にがんとともに生きている人も増えています。自身も骨軟部腫瘍にかかり、がんサバイバーである医師の坂下千瑞子さんの著書『がんになった人だけが知っている人生で大切なこと』(アスコム)より、2つのケースのがんを発症したサバイバーの体験記を漫画の連載形式でお届けします。
社会を動かす患者の力
私が山田さんと初めて会ったのは、闘病生活を経て仕事に復帰し、都立駒込病院でがん患者さんたちのおしゃべりサロンを立ち上げようとした時期でした。
おしゃべりサロンとは、がん患者さんやそのご家族の方などが集まり、病気の悩みや体験などについて語り合い、交流する場です。
その立ち上げにあたり、いろいろな相談をしたのが山田さんでした。
サロンは患者同士がお互いに支え合う「ピア(=仲間)サポート」という考え方に基づいています。
「体験を共有し、共に考える」という立ち位置で、どのような内容のサロンをどのようなスタイルで行うか、スタッフをどのように配置して、どう運営していくかを、山田さんたちと一緒に考えました。
「がん患者団体支援機構」の仲間の協力にとても助けられ、勇気づけられました。
山田さんは、リレー・フォー・ライフ(RFL)の日本での発祥の地であり、プレ大会が開催された茨城県のご出身で、このプレ大会から参加されていました。
2016年に立ち上げたRFL御茶ノ水の運営でも力を発揮してくださっていて、共に同じ理想を抱いて活動を続けてきました。
非常に幅広い活動をされていて、現在では「がん患者団体支援機構」の事務局長も務められています。
支援機構が主催する「がん患者大集会」は2005年から毎年開催され、全国のがん患者さんやご家族が抱えているさまざまな声を集めて議論し、がん患者の想いを医療者や行政に届けるという大きな役割を担っています。
この取り組みも含め、たくさんのがん患者さんが声を上げたことにより、がん対策の必要性が社会に認識されるようになり、2006年の国のがん対策基本法の成立へとつながったといわれています。
がん患者本人や家族が主体となって、がん患者支援やがん征圧の活動が少しずつ盛んになってきたのもこの頃からです。
先人たちの努力と、その情熱と勇気は本当にすばらしく、私自身も大きな力をもらいました。
今では、全国各地でさまざまな団体が患者支援や啓発活動等を行っています(各自治体や日本対がん協会のがんサバイバー・クラブのHPからも検索可能です)。
このように、がんの経験者たちが声を上げ、社会を動かす原動力となることは本当に素晴らしいことだと思います。
私は、治療中だった2007年に妹に付き添ってもらい、その年のがん患者大集会の会場であった広島県まで出向いて参加しました。
そのとき、会場内の熱気に圧倒されたのを覚えています。
この大会は、全国のがん患者や支援者たちが一堂に集まり、がん患者がよりよい医療を受けられるようにするために、日本のがん医療がどうあるべきかを話し合うという、当時としてはとても画期的な取り組みでした。
「がん患者が世の中を変えていこう」という考え方に、私は深い感銘を受けました。
私自身も、病気になったことでつらい思いをした経験を、次の誰かのために活かせるよう、できる限り行動していきたいと思っています。
そんな活動の大先輩であり、尊敬すべき友人でもある、山田さんのご活躍の原点となった物語をご紹介します。