がんになった僕の代わりなのか...11年飼っていた愛犬の死/僕は、死なない。(23)

「病気の名前は、肺がんです」。突然の医師からの宣告。しかもいきなりステージ4......。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる治療法を試してもがき続ける姿に......感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。21章(全38章)までを全35回(予定)にわたってお届けします。

がんになった僕の代わりなのか...11年飼っていた愛犬の死/僕は、死なない。(23) pixta_6402_S.jpg

ついに来た、痛み

あの掛川医師に会った日から、明らかに体調がおかしくなった。

再び頭の中に掛川医師の声が響き渡るようになった。

「胸が、痛ーくなります」

「咳が止まらなくなります」

「痰に血が混じります」

「水が飲めなくなります」

「だるくなります」

「寝たきりになります」

うわーっ、黙ってくれ!!!

ふと気づくと、頭の中が掛川医師に占領されてしまっていた。

その都度頭を振って掛川医師を追い出そうとしたが、すぐに彼は例の眉間にシワを寄せた表情で、再び僕に向かって語りかけてきた。

「胸が、痛ーくなります」

「咳が止まらなくなります」

「痰に血が混じります」

「水が飲めなくなります」

「だるくなります」

「寝たきりになります」

僕は彼に取り憑かれてしまっていた。

そのうち、研修で話している最中に咳が頻繁に出るようになった。

喉に痰が絡むようになった。

まずい、ヤツの言った通りになるのか?

不安が胸に押し寄せてきた。

そんなある日、11年飼っていた犬が死んだ。

夏に少し具合が悪くなり、しばらく体調不良が続いていたので、妻が病院に連れて行ったら、その日の夜にあっけなく逝ってしまった。

連絡を受け病院に到着し、亡き骸を抱きしめると涙が出てきた。

彼の顔、彼の声、彼の姿、全てが愛おしい。

しかし目の前の彼はもうピクリとも動かない。

まだ温かさが残る身体は、不思議と命のエネルギーが去って行ったことを示すように生気がなかった。

「僕の代わりに逝ってくれたのかもしれない......」

ポツリとつぶやいた。

「そうかもね......」

妻が目を伏せた。

僕も死んだら、こうなるのか......。

僕は彼の亡き骸を抱きしめながら、自分の死体がまぶたに浮かんできた。

いや、僕は死なない。

死ぬもんか!

すぐに頭を振って打ち消したが、青白く生気のない自分の顔が消えることはなかった。

 

刀根 健(とね・たけし)

1966年、千葉県出身。OFFICE LEELA(オフィスリーラ)代表。東京電機大学理工学部卒業後、大手商社を経て、教育系企業に。その後、人気講師として活躍。ボクシングジムのトレーナーとしてもプロボクサーの指導・育成を行ない、3名の日本ランカーを育てる。2016年9月1日に肺がん(ステージ4)が発覚。翌年6月に新たに脳転移が見つかり、さらに両眼、左右の肺、肺から首のリンパ、肝臓、左右の腎臓、脾臓、全身の骨に転移が見つかるが、1カ月の入院を経て奇跡的に回復。現在は、講演や執筆など活動を行なっている。

この記事は『僕は、死なない。 全身末期がんから生還してわかった人生に奇跡を起こすサレンダーの法則』(刀根 健/SBクリエイティブ)からの抜粋です。

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