老後2000万円不足の問題を耳にして、すぐに貯蓄や投資を始めようとした人、ちょっと待って!何となく始めてしまうと、大きな失敗につながります。そこで、2万3000人の家計を再生したファイナンシャルプランナー・横山光昭さんの著書『となりの家(うち)のざんねんなお金の話』(あさ出版)から、実際にあったお金の失敗エピソードを連載形式でお届け。動き出す前に、まずはお金の正しい知識を学びましょう。
貯蓄好きな日本人
日本人はもともと貯蓄が好きな国民です。家計調査を見ても、2017年の年収に対する貯蓄の比率は293%(2人以上の世帯)に上っています。
どれだけ国が「貯蓄から投資へ」といって、銀行窓口での投資信託の販売を解禁したり、株式の売買手数料の自由化などの規制緩和を進めたりしても、なかなか個人のお金は市場に流れませんでした。
しかし、しっかりと投資で資産を増やしている人がいるのも事実。昔は「定期預金にすれば金利もいいし増える」といった時代もありましたが、金融緩和政策の一環でゼロ金利が続くなか、定期預金に預けても微々たる金額しか増えません。
ただ、「株などは損するのが怖くて手を出せず、ずっと銀行預金一本できました。しかし、まったく増えず、老後に向けた資産を貯めることができません」という人は依然として多いものです。
●木下さん(52歳/女性)の場合......
「いろいろ勧められるんですが、怖いんですよねぇ投資って。だって株とかって損をするじゃないですか」
家計相談にやって来て、そう訴えるのは専業主婦の木下さん。ご主人の給与とボーナスは、振り込まれる銀行に置いておき、その一部を定期預金に回していました。
そんな折、夫婦で「そろそろ老後資金を作っておかないとなぁ」との話になり、通帳を記帳して見てみると、ほとんど増えていないことに気づきました。
木下さん夫婦は、特段、ぜいたくな生活もしていませんでしたが、それでも心もとない金額しかありません。木下さんは、「やはり株とか投資信託などに投資したほうがいいのか」と悩んでいました。
しかし、これまでやったことがないわけですから、何にどう投資すればいいのか、ましてやいくら投資すればいいかなど、さっぱりわかりませんでした。
そして、証券会社を選んだり、口座を開設したりすることが「大変なことなのではないか」と心配し、段々と投資そのものがおっくうになってきたといいます。
投資は「危ない」「損をする」は間違い
もちろん、資産を作る手法として預貯金を否定するものではありません。わけのわからない、怪しい金融商品などに投資するよりはよほど安全です。
しかし、前述したように金利がつかない現状では、"タンス預金"となんら変わりはありませんから、増えないのも事実。
そもそも、日本人に根強く残っている「投資は危ない」「投資は損をする」という考え方は誤っています。
しっかりとした知識をつけないまま、間違った投資をしているから大きな損を出してしまうのです。
当然、投資にリスクはつきものですが、そのリスクをきちんと把握し、家計の範囲内でコントロールするようにしておけば、決して危ないものではありません。
お金があり余っている人でなければ、基本は「積み立て型の投資信託」をお勧めしています。
なぜなら少額からできますし、積み立てにすることで、家計への負担を抑えることができるからです。
そして、もう1つは「分散投資」をすること。極端な話ですが、1つの個別株に全財産を投資すれば、その株が大きく値を下げたとき、その人は終わってしまいます。
私は常々、基本的には逆相関の関係にある株と債券の投資信託を、そしてそれぞれ日本国内のものと海外のものとの4つに投資していればいいといっています。そうすれば、大きく損をすることはないのです。
いずれにしても、教育資金や老後資金を預貯金だけで作ることは厳しくなっています。投資信託であれば、3000円くらいの少額から始めることができますので、ぜひチャレンジしてほしいものです。
【ここがざんねん】知らないから投資が始められないのは実にもったいない話。少額からスタート、経験しながら知識を蓄え、徐々に投資額を増やして資産を作っていけばいいのです。
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