<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ちもて
性別:女
年齢:52
プロフィール:子育て終了! 勝手気ままに暮らしたい、お気楽主婦。
義母は若い頃から働き者で、夫が小学生の頃から夜遅くまで働いていました。義父の収入だけでは足りないからと言うよりは、家事や炊事が苦手なので、そこに時間を割くくらいなら出来合いのものを買って食べてでも、男並みに働いて家のローンを返し、預貯金に励みたい人だったようです。75歳を過ぎた今も家でぼーっとしているのがいやで、早朝から2つ3つと仕事を掛け持ちして働くことに生き甲斐を感じているようです。
これと言った趣味もなく、自分にお金をかけることもしない義母。そんな義母が、孫娘の成人式に「着物を買ってあげる」と言い出しました。わたしも夫も着物にはたいして興味がなく、娘もそうだったので、成人式は10〜20万程度で写真も全てセットになったようなレンタルで済ませればいいと考えていました。購入しても保存するタンスもないようなマンション暮らしですし、義母にはレンタルで充分だ、と言ったのですが、「クリーニングも保存もうちでするから、どうしてもいい着物を着せてやりたい」と言い張られました。それなら反対する必要もないかと、一緒に着物を見に行くことになりました。
義母の知り合いのつてで、あらかじめ予約を入れて京都の呉服店までわざわざ足を運びました。義母は娘にどんどん着物をあてがい、ああでもないこうでもないと店主と話しています。わたしと夫はそれをただ眺めているだけでした。着物には値札が付いているわけでもなく、こっちとこっちではどっちがいいかと聞かれても、見る目を持っていないわたしたちは曖昧に返事をするしかありません。義母も形式上聞いてみてはいるものの、自分の中では決めているようで、やがて2〜3枚に絞り込まれ、そして最終的に1枚が選ばれました。もちろん着物には帯も必要で、「この着物にこの帯では見劣りする」だの「これとこれでは格が違う」だの、わたしにはさっぱりわからないうんちくを聞きながら、あれよあれよと言う間に全て義母の一存で上から下までひと揃えが決まったのでした。
支払いの段階になって、店主が出してきた書類に書かれている数字を見て、わたしと夫はびっくり仰天して顔を合わせました。草履や鞄も含めてその金額は250万円を軽く超えていたのです。「いい着物」と言われてもせいぜい100万もするのかな、ぐらいに考えていたわたしは「えー! えー! えー」と心の中で叫んでいましたが、その数字を見ても満足そうにニコニコしている義母には何も言うことができませんでした。今までそんな高い買い物をしたことも見たこともない娘もかなり困惑している様子で、申し訳なさそうな顔をしていました。
義母には口が裂けても言えませんが、のちに娘と「振袖にあんな金額を出してくれるくらいなら、半額以下の着物でいいから残りのお金をくれたらもっと嬉しかったのに」と罰当たりな会話をしたものです。我が家の経済状態からしても、義母の普段の暮らしぶりからしても、手放しに喜ぶことのできない金額を使い、「さあ、ばあちゃん、明日からもっと頑張って働くからね!」と張り切る義母に、ありがたさを感じながらも、もやもやした気持ちを拭い去ることができなかったのでした。
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