断り切れず高価な着物を購入!でもそれが一生の楽しみのスタートでした

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ペンネーム:八知
性別:女
年齢:54
プロフィール:親戚の女性から譲られたたくさんの着物。袖を通して見たもののどこをどうしたらいいのかさっぱり分からない。自分で着られたらいいのに...。そんな私が、やがて自分で着物を購入するまでになりました。

日本人に生まれたからには、日本髪を結って美しい柄の着物で街を歩いてみたい。若い頃から着物への憧れはありましたが、なかなか機会はありませんでした。成人式は仕事で行けず、いつも和装だった祖母はとうに亡くなり、母は着物に興味無し。ですがある日、親戚の女性から沢山の着物を頂いたことがキッカケで、私は和装でできるアルバイトを始めました。22歳の時でした。とっくに成人式も過ぎてからの着物との出会いでしたが、私もついに着物を自力で着られるようになり、その上美味しい懐石料理の知識も得ることができ、とても良い経験となりました。


それから1年ほど経った23歳のある日、私は何気なく行ったデパートで、呉服店の店員さんに呼びかけられそのまま着物を購入してしまいました。買う予定ではなかったのですが、店員さんの巧みな営業トークと色とりどりの着物、試着した姿にうっとりしてしまったのです。そのまま高額な着物と帯小物一式をローンで購入。何という展開!家に帰ってから、断り切れない自分の性格と、重くのしかかったローンに落ち込みました。ところが、不思議とこの着物を返品しようという気にならず、その1カ月後には呉服店直営の着物着付け学校へ通っていました。それは店員さんが薦めてくれたもので、たまたま職場の近くに教室があり、せっかく購入したのだからきちんと着られるように少しやってみようと、軽い気持ちのスタートでした。


アルバイトの時和装だったので、基本は自分で着ることはできましたが、それ以外に浴衣や袴、振袖の着付け、さらに自分だけでなく人に着付けをすることも同時に習いました。そして、着物のたたみ方、季節に合った着物選びや着物の歴史、慶事や不祝儀のしきたりなど、学ぶことはたくさんです。
そして、学校で知り合った同級生たちとの交流は、とても得難い経験となりました。試験の前には私の家に集まって、帯の結び方を復習しました。着付けは意外と力仕事で、締め付ける時は肩の筋肉は軋み、新しい帯は板のように固くて手の平はつりそうになります。みんなで助け合ってがんばりました。また、休日に着物姿で出かけたり、染色をやっていた同じクラスの方の個展に行ったりと、勉強以外にも楽しい思い出がたくさんあります。


試験を無事パスして卒業した後は、着付け師としてしばらく成人式などのお手伝いをしていました。自分で着付けをした美しいお嬢さんが、晴れ晴れとした顔で街へ出てゆくのを見るのは、とても楽しい経験でした。


結婚後しばらくは着付けの仕事や着物を着ることと離れていましたが、私の卒業した着付け学校では卒業後も実費で講習を受講することが可能で、教室の見学も自由な為、忘れた所は何時でも復習することができます。時々気晴らしに着物を着て街へ出て、講習をして帰ってくるだけですが、着物に袖を通しただけで、背筋がピンを伸び、楽しい気持ちになります。


数年前の事、職場の中国人のお嬢さんがちょうど20歳だという話を聞き、長いこと袖を通してなかった振袖を着てもらいました。着付けの練習用に、私のタンスには、中古で購入した振袖がいくつもありました。ささやかですが成人式の真似事をし、同じ職場の同僚も私の家に集まって色々な着物を着てもらって、楽しくお茶を飲んだり、写真を撮りました。とても喜んで頂き、中国のご両親に写真を送ったと感激の言葉をいただきました。


ちょっとした趣味ですが、自分が楽しむのはもちろん、他人を楽しい気持ちにさせたり、それを一緒に楽しむ仲間と集う機会があると、さらに楽しみが大きくなります。このような経験をさせてくれる着物との出会いに感謝しています。着物とのお付き合いは、私の人生に数々の楽しい思い出と、向上心を与えてくれました。ローンを組んで購入した最初の着物は今でも私の宝物で、数年に一度は虫干しと称して袖を通しています。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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