<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ジャンボ
性別:女
年齢:53
プロフィール:シングルマザーです。若い頃は友達優先でしたが、この年齢になって親戚や身内が大事と実感するようになりました。
70代後半の叔父は、現役で働いていた時は高度な専門技術者でした。退職してからは、俳句の会や登山の会、地域の子供達に工作を教える会、自治会、老人会などさまざまな会に積極的に参加。家族があまり出歩くと疲れるわよ、と言っても聞く耳を持たず、自分がやらなければ誰がやる?とばかりに、何にでも参加していました。
その叔父が珍しいタイプのガンになりました。この種類のガンは皮膚の表面のいろいろな所にシミのようなものができるらしく、「こんな姿を他人に見せられない」と出歩き好きの叔父が家から一歩も出なくなりました。叔父が参加していたさまざまな会からあの手この手でお誘いを受けても、「病気で行けない」と言わず「都合が悪い」と言って断ってばかり。そして叔父の奥様(70代中ごろ)も、家に閉じこもってしまった叔父が心配で「とても主人を一人にできない」とばかりに買い物も全て宅配で済まし、夫婦揃って外界をシャットアウト。家に引きこもって病気と病気にまつわるさまざまな事を呪い、鬱々とした生活をおくっていました。
その叔父が抗ガン剤治療のために数週間大きな町の病院に入院しました。大変な治療を終え退院した時、叔父の髪はすっかり抜け落ち痩せていました。
さぞかしまた世の中や自分の置かれた環境を恨んでいるのだろうと、こちらも鬱々とした気分で迎えに行きましたが、叔父は見違えるように顔に力が出て表情が明るくなっていたのです。
叔父は今までずっと「なんで自分だけがこんな病気に」「自分が病気だから外にも恥ずかしくて出られない」とことあるごとに、怒ったり嘆いたりして息子や娘、みんなを困らせていました。ですが今回の長期治療で、山のように高いプライドがあっても、怒っても悔やんでも呪っても病気は治せないと気がついたのか腹をくくったのか、病気に対して以前より考えが前向きになっていたのです。
すると、痩せた顔は以前より精悍に見え、治療で髪が抜け落ちた坊主頭は精悍な顔をよりシャープに見せているではありませんか。
頭から足先まで、体に芯が一本通った叔父の姿は見て、私が「おじさん、俳優の〇〇に似ているわよ」というと「冗談はやめてよ」と言いつつも嬉しそうで、そんな叔父を見ていると、私も元気が湧いてくるようでした。
叔父の退院を誰が迎えに行くか、家族内で半分けんかで決めました。鬱々とし、暗い言葉しか言わないような叔父を迎えに行くのは、家族のだれもが嫌だったのです。
が、何か吹っ切れたような叔父は本来の明るさを取り戻し、大地にシャンと立って前を向いていました。私は叔父を見ていて、なぜかとても清々しい気分になり、退院のお迎えに来て、本当によかったと思いました。
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