<この体験記を書いた人>
ペンネーム:あんだんて
性別:女
年齢:55
プロフィール:明治生まれの祖母と昭和一桁の両親の元で、日本の高度成長とともに育ってきた昭和世代です。
住宅金融公庫で頭金を積み立てておいて、会社を通して銀行からお金を借り、長い年月を経て返済していく。会社に勤めているという信用が後ろ盾になって可能になる多額の借金。
今から約20年ほど前に家を建てました。頭金として住宅金融公庫で約1,000万を貯め、3,500万くらいの借金をしたと思うのです。「思うのです」......そう、ローンを組んだのは夫。私は専業主婦で無収入。3人の子供がまだ幼かったこともあり、夫にすべてを任せていました。実際にいくら借りたのか、月々やボーナス時の返済がいくらになるのかは全く把握していません。
当時の夫は40歳。25年の返済計画で、60歳で定年を迎えた際には5年分のローンが残る計算でした。それは退職金で支払う......そんな予定だったように覚えています。
ですが20年前に立てていた予定とは違い、夫は定年を待たずに57歳で退職。退職時にローン残高なども調べていたところを見ると、夫本人もあといくら残っているのかよく分かっていなかったようでした。現役時代は仕事で手いっぱいな上に遠距離通勤。借りっぱなしだったのも無理のないことだと思います。
ちょうどローンを組んだ頃から、夫の給与明細がデジタルデータ化して夫に送られるようになり、私の目に入らなくなりました。月々の返済額やボーナス時の返済額がいくらになるか? 全くあずかり知らぬことでした。
夫が退職したのでローンの借り換えを行い、銀行口座から引き落とされるようになって初めて知る月々の返済額。ボーナスがないので毎月9万円です。今は無収入ですから、ローンの借り換えによって生じた20万ほどの損益もあわせて痛い出費になっています。
私としては、住宅ローンを完済して借金をゼロにしたいところなのですが、夫は自分が亡くなれば完済する必要がないと言い張って譲りません。これは以前からそうで、貯金をするよりも借りる方が安いというのが夫の考え方。夫にもしものことがあれば返済する必要がないので保険にもなるとも。とはいうものの、あれから20年、夫はおかげさまで元気です。
今から思うと、夫はローンを組んだ時点では月々の返済で生活がひっ迫しないような無理のない計画のつもりだったんだと思います。それにバブルの頃に退職していた人たちの姿を自分にも当てはめて、自分の将来を思い描いていたのかもしれません。しかし、時代は変化していくもの。年金同様に退職金も目減りしています。
25歳で結婚し子供を持ち、マイホームを建て......といった人生ゲームのような姿は過去の産物。成人した息子たちに言わせると、マイホームを持つという意識もそのために多額の借金をしてローン返済していくという考え方も、今の時代にそぐわないと言います。
正直なところ、20年前には今の自分達の姿や日本の経済事情その他諸々は想像できてはいませんでした。住宅ローンで借りた金額と返済期間。今さらですが、本当にあれでよかったのか疑問に思います。やはり、多少きつくても退職までに完済できる計画を立てておけばよかった。それ以上に、もっと小さな家にして借りる額を少なくしておけばよかった......。
20年なんて過ぎてしまえばあっという間です。5年毎の見直しや変更をすべきだったのかもしれません。年々頑固さを増す夫を前に、すべてを任せてしまっていたことに後悔しています。
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