「今までたくさんありがとう」父の命が尽きるまでの日々。最後の力を振り絞って「伝えようとしたこと」は/キッチン夫婦

こんにちは。ブログ『キッチン夫婦』を運営しているべにゆうです。

【前回】「ギリギリ生きている状態です」父の担当医の言葉に涙をこらえる母と娘

「今までたくさんありがとう」父の命が尽きるまでの日々。最後の力を振り絞って「伝えようとしたこと」は/キッチン夫婦 pixta_68348129_S.jpg

転院してから3週間、父と面会ができなかった。

良くなったから転院したのに、今度は週に1度も会うことができないなんておかしいと思い、もやもやして過ごした。

やっと3週間ぶり会った父は、痩せていたけど顔色は良いし話もできた。

そして医師から「容態も安定していますし、いつ退院しても良い状態です」と言われたので、父が入居する施設をいよいよ決めなければと動いた。

早く退院させてあげたいけど、入れればどこでもいいわけじゃない。

いろいろと調べたり見学して悩みながら探し、入居予定が決まった。

父に退院日と「こういう施設に入ることになるからね」と伝えると、"うん"とただうなずくだけだったが、入ればきっと「あぁここも良いなあ」と言ってくれると想像していた。

退院予定の前日、病院から電話が来た。

いつもなら病院からの電話は"何かあったのでは?"とビクッとしてしまう。

ただ、この日は退院日の支払金額について連絡が来ると知らされていたので、その電話だと思った。

"いくらぐらいかな?"と思いながら電話に出たら、会計課からではなく病棟からだった。

「今朝、痙攣を起こしました。

前の病院と同じ薬を使っていますがおさまらず、不規則に痙攣を起こし良くない方向になっています。

明日の退院はできなくなりました。

先生からの説明もあるので午後に病院に来てください」

とのことだった。

愕然として言葉が出なかった。

何より母に伝えるのが辛かった。

退院予定の前日だ。

落ち着いた状態が続いていてご飯も3食きちんと食べていたのに。

明日朝9時までに病院に迎えに行って退院し、施設には10時までに着く予定。

なのに急に悪くなったなんて、そんなはず...。

結局、母は次の日に行くことにし、休みだった夫と一緒に面会に行った。

前回は何も付けていなかったのに、点滴やらモニターやらもう色んなものに繋がれている。

酸素マスクを付けて目をつぶったままだ。

最初に戻ってしまった。

痩せこけているせいもあり、より悪く見えた。

私は話しかけた。

「クリちゃん(愛犬)、おやつみんなからもらっているよ。食いしん坊だよね」

「Oちゃんがさ、電話よこしたよ。お父さんいないとつまんないってさ」

「Aさんがさ、いつ帰ってくるんだって。話したいことがあるってよ」

「Sさんは何回も電話かけてきて会えませんか?ってさ」

「Rさんなんか心配してうちにお見舞い届けにに来たよ」

ただずっと話しかけ手をさする。

顔をなでる。

髪の毛を整える。

涙はこらえた。

夫は

「お父さんKですよ。べにゆうさんと来ましたよ。

お父さん、お母さんとべにゆうさんのことは心配しないでくださいね。

自分がちゃんと守りますから大丈夫ですよ」

と繰り返し言っていた。

その時、目の前で起こった出来事。

父に一瞬血の気が戻ったように見えた。

眼をぐっと開けた。

そして私ではなく夫の方をぐっと見ていた。

このまま喋り始めるのか、お父さんにまた奇跡が起こるの?と錯覚してしまうような一瞬だった。

数秒だったのだと思う。

少しだけ口も動かしていた。

帰り道、夫が

「びっくりしたよね。お父さん目を急に開けた。

歌舞伎のにらみみたいだった。

お父さん最後の力をふりしぼって、どっちかって言うと "お母さんのことを頼む"って俺に伝えたんじゃないかな」

と言った。

そうだなと感じたけど、その時はなんとなくしか頷けなかった。

夫の言う通り、父の最後の力の気がした。

けれど、まだ最後だとは思いたくないので考えないでいた。

前のように回復してくれないかなと、希望は捨てたくなかった。

ただ、今回は違って見えたのも違いなかった。

入院から3カ月半が経っていた。

起き上がらせてもらいご飯は3食自分で食べていたけど、自力で座ることは難しかった。

立ち上がることはできなかった。

リハビリすることも無理なぐらいだった。

目がくぼみ方もこけてきて本当に痩せて痩せていた。

父に頑張ってと願うのも酷に感じていた。

願うのは苦しまないで欲しいだった。

「心づもりをしていてください。

呼吸が弱くなっている時が多いです。

夜中に電話するかもしれません。

いつでも電話に出れるようにしていてください」

と言われてから、4日後、息を引き取った。

その日、私だけが最期に立ち会えた。

「お父さん来たよ。

お母さんもすぐ来るからね。

大丈夫だよ。

今までたくさんありがとう。

私、幸せにしているから。

Kさんもいるし。

クリも元気だよ。

大丈夫だよ。

お父さんいっぱい頑張ってくれたんだよね。

ありがとう」

----------------------

大根おろしとしょうがのすりおろし汁

「今までたくさんありがとう」父の命が尽きるまでの日々。最後の力を振り絞って「伝えようとしたこと」は/キッチン夫婦 大根おろしとしょうがのすりおろし汁.jpg

材料

大根おろし...20cm分

生姜すりおろし...15g

しいたけ...4枚

水...1L

チキンブイヨン...大さじ1.5

しょうゆ...小さじ2

酒...小さじ2

塩、こしょう...各少々

ごま油...小さじ1/2

小ネギ小口切り...5cm分

作り方

(1)しいたけは斜め切りにする

(2)鍋に水、酒、チキンブイヨンを入れて加熱。湧いてきたらしいたけを加えさらに加熱

(3)ひと煮立ちしたら生姜と大根おろしを汁ごと加えて、塩こしょう、しょうゆでととのえる

(4)火を止めてごま油、ごま油を食わせて出来上がり

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
記事に使用している画像はイメージです。
 

キッチン夫婦・べにゆう

夫と2人で始めたブログの名前が「キッチン夫婦」です。料理や食べ物、食卓やキッチン関係のことを夫婦で話をして、そのことをブログに書いていけたらいいね、ということで始めたブログだからです。妻の私が記事を書いていますが、夫は記事にするアイディアを考えたりイラストを担当。その夫、私と結婚前の8年間ほど、シングルファザーで息子を育てていました。そして今年息子が就職で家を離れた。夫はさぞかし「息子ロス」になってしまうのではないかと心配されましたが、無事に乗り越えてきているように見える。その様子を見守りながら、コロナ禍のさなか夫が立ち上げた新規事業を手伝うべく、様々な発見と困惑に直面しながら日々奮闘中です。

※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

ブログ:「キッチン夫婦」


71T4wa1PDyL.jpg

『14歳男子の継母になった私』

企画・原案: べにゆう(キッチン夫婦) 漫画:汐田まくら/KADOKAWA)

40歳初婚のべにゆうさんの元に夫が連れてきたのは、なんと14歳の大きな息子。「本当の母親でない」劣等感と、反抗期の子育てへの焦りを抱えながら、一つ屋根の下で始まった同居生活。2人"本当の家族"になれる日は訪れるのかー!?

▶Amazon(単行本)
▶Amazon(電子書籍Kindle版)
▶楽天ブックス(単行本)
▶楽天ブックス(電子書籍Kobo版)
▶Renta!
▶コミックシーモア
▶ebookjapan
▶BookLive!
▶BOOK☆WALKER

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています


柴門ふみ『いつも犬が居たー女三代恋物語―』

この記事に関連する「みなさんの体験記」のキーワード

PAGE TOP