年甲斐もなくときめいた!脳梗塞の夫が「俺は一人で行く」と言い出した理由

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:50
プロフィール:12歳から23歳の3人の子ども&脳梗塞の夫と暮らす、50歳のワーキングマザーです。

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夫の母の新盆法要が隣県にある菩提寺で行われることになっていたときのことです。自家用車2台に、家族5人が分乗して行く予定でした。ところが、いよいよ明日が法事というときになって突然、夫(55)が「俺は一人で電車に乗って行く!」と言い出したのです。

夫は7年前に脳梗塞を患い、右半身のマヒと言語障害があります。確かにリハビリのおかげで自立歩行もできるようになったし、家族となら普通の会話であれば問題なくできます。しかし、家で一日座椅子に座って過ごす生活をしていてほとんど歩かないため、電車に乗って目的駅で降り、さらにタクシーを拾いお寺まで行くことができるのか、体力的にかなり不安がありました。

言語障害のほうも心配です、知らない人に早口で話されると理解が追いつかず、イライラして怒りっぽくなります。「もしも誰かとケンカになってしまったら......」、心配の種は尽きません。

「車のほうが楽だよ? 途中で具合悪くなったら心配だし......」。やんわりと、車で出かけようと説得を試みますが、夫は頑として「俺は一人で電車に乗って行く!」の一点張りです。もともと、こうと決めたら引かない性格の夫です。なぜ電車で行きたいのか理由が全くわかりませんが、とにかく電車で行けば気がすむのだろうと「じゃあ、私と2人で電車に乗って行こうか?」と言ってみました。家族全員で行くと電車料金がばかになりません。かといって夫を一人で電車に乗せて行かせるのはやはり心配です。良い妥協案だと思ったのですが、やはり夫は「俺は一人で行く」と、私の同行を拒否してきました。

法事は明日です。いくら考えても夫が電車で行きたい理由が分からず、ほとほと困りました。いっそ、だまってこっそり夫の後をついて行こうかとも考えましたが、絶対にばれるだろうし、ばれたら夫の怒りが爆発するのは目に見えていました。そうなれば法事どころではありません。これはもう、夫の言うとおりにするしかないと思いました。「分かった、お父さんの言うとおりにしよう」。そう言って、私は夜勤の仕事に向かいました。

そして、翌朝仕事から帰った私は長女が運転する車に次女や末息子と一緒に乗り、夫よりも先に家を出ました。料金節約のために高速道路には乗らず国道で行くので、3時間はかかり、電車で行く夫よりも早い出発になりました。「スマホを忘れないで持っていってね」と夫に念を押して、不安な気持ちで家を出発。お寺の駐車場に着いてすぐさま、夫のスマホに電話を入れました。「今、お寺の駐車場にいるよ。お父さんは、もう着いたの?」と尋ねると、「ああ、30分前に着いた。今はお寺の中にいる」とのこと。「もしかしたら、疲れてイライラしているかも?」と思っていたけれど、夫の声は思いのほか明るくて、ほっと一安心。まるで自分が、はじめてのおつかいをした小さな子どもを見守る母親のようだと、苦笑しました。

法要は無事終了し、また夫は一人、電車で家に帰ることになりました。疲れているだろうから、私が電車で帰って、夫は車に乗るように言ったところ夫がボソリとひとこと。「お前は夜勤で寝てないんだから、車で寝て行け」「え......?」。私は思わず、目をぱちくりと見開いてしまいました。

もしかして、いえ、もしかしなくても、夫が一人で電車で行くと言った理由は、車が2台になって夜勤明けの私に運転をさせないため、つまりは、私のことを思いやってのことだったのです。

胸の奥がじんわりと温かくなって、鼻の奥がツンと熱くなりました。私は、夫のワガママだと少しうんざりする気持ちがあったというのに、それなのに、この人は――と。

年甲斐もなく、思わず夫にときめいてしまった、50歳の夏の出来事です。

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