脳梗塞後、短気になった夫が起こした「テーブルひっくり返し事件」

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ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:49
プロフィール:
3人の子持ちママです。私が42歳のときに47歳の夫が脳梗塞で倒れ、右半身の麻痺と言語障害などが残りました。私自身も甲状腺の持病の他に、年齢とともに高血圧症や椎間板ヘルニアなどの病気が出てきています。

私には、47歳で脳梗塞心原性脳塞栓症)を患った夫がいます。倒れた当初は最悪の事態も覚悟しましたが、幸い、命を取り留めることができました。左の脳の広い範囲にダメージを受け、右半身麻痺と言語障害の後遺症が残ったものの、夫も積極的にリハビリに取り組み、医師も驚くほどの驚異的な回復をみせました。入院から1カ月後には退院して、毎日夫がリハビリに取り組む様子を見ながら、「このまま順調に行けば、元の仕事に戻れないまでも、社会復帰することができるのでは?」そんなかすかな希望が、私の中に芽生え始めたころ、表面化したのが夫の性格の変化です。

もともとは、人当たりがよく穏やかな性格だった夫が、脳梗塞後はかなり短気で怒りっぽくなりました。わが家には、3歳から17歳の3人の子どもがいますが、特に3歳の末息子の何気ないひと言にカッとなって怒鳴ることは日常茶飯事で、勢い余って手が出そうになることもしばしば。そんなときは、文字通り私が夫と子どもの間に割って入って事なきを得ていました。最初は、後遺症のせいで、イライラしているのだろうと思っていましたが、それだけではないと実感したエピソードが「テーブルひっくり返し事件」です。

夫と私、そして3人の子どもたち、家族5人で夕飯のテーブルを囲んでいた時のことです。わが家は、家具調コタツを食事用のテーブルとして使っていたのですが、夫が末息子の取った行動に激怒して、突然、料理が乗ったコタツの天板をひっくり返したのです。一瞬、何が起こったのか分かりませんでした。分かったのは、今日の夕飯が見事に床一面に散らばっていること。そして、息子が大泣きをしていることでした。

夕飯のメニューは、豆腐とひき肉を混ぜたミニ豆腐ハンバーグを大皿に盛ったものと野菜サラダ、お味噌汁というもの。ハンバーグが大好きな息子は、自分の茶碗にハンバーグをたくさん乗せました。それが夫の逆鱗に触れたのです。脳梗塞を患う前の夫なら、笑って「慌てないで食べなさい」と言ったでしょう。でも、その時の夫は、自分だけ欲張る3歳の息子が許せなかったのです。

医師の話では、夫のように、脳梗塞後に性格が変わったように怒りっぽくなるケースもあるのだそうです。確かに、言葉が上手く出ないイライラもあるでしょうし、自分の現状に対するストレスからくるイライラもあるでしょう。でも、それとは別に、脳梗塞の後遺症の「高次脳機能障害」からくる性格の変化もあるのだと知りました。

一時は私もこれからどうやって夫と接していけばいいのか真剣に悩みましたが、夫の性格の変化が、「高次脳機能障害」によるものだと分かったことで、怒りっぽくなったことを脳梗塞の後遺症の一つとして捉えることができるようになりました。原因がはっきりしたことで、客観的に見られるようになったのかもしれません。現在では、末っ子も10歳になり、だいぶ父親との上手な接し方を学んでいます。そして、相変わらず夫は怒りっぽいですが、それでも、以前よりは感情が爆発する頻度が減ってきている気がします。

昨日よりは今日。今日よりは明日がよりよい1日であるように。病気の後遺症があることには変わりませんが、本人も周りの人間も上手な対応の仕方を焦らずに学んで行けばいい。今は、そんなふうに思っています。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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