本当に後悔しない? 絶縁状態だった母親の葬儀への参加を拒絶した夫が心配

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ペンネーム:向日葵
性別:50
年齢:女性
プロフィール:12歳から24歳の3人の子ども&脳梗塞の夫と暮らす、50歳のワーキングマザーです

※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

◇◇◇

昨年の秋、絶縁状態だった義母が80歳で亡くなりました。15年ほど前に夫の妹夫婦と同居していた義母は、事業に失敗した妹夫婦と一緒に夜逃げ同然で消息を絶ちました。夫に残されたのは、義母の頼みで引き受けた妹夫婦の住宅ローンの連帯保証債務。そして15年あまりが経ち、支払いも済んだ現在、夫の妹から突然義母の死と家族葬を行なうとの知らせが届いたのです。

7年前に48歳で脳梗塞を患い、現在右半身マヒと言語障害の後遺症があり、自宅療養中の夫が、母親の死の知らせを受けて口にしたのは「俺は葬式には出ない」との拒絶の言葉でした。健康だったころ、夫は「妹夫婦や義母を許せないのは、住宅ローンの連帯保証の支払いを負わされたからではなく、何の連絡もなく消息を絶ったことだ」と言っていました。

いきなり怒って電話を切ってしまった夫に何事かと聞けば、妹は昔のことには一切触れずに葬儀の日程を伝えてきた後、「お兄ちゃんは長男だから葬儀の費用を出して欲しい」と言ってきたそうです。怒り心頭の夫は、「俺は脳梗塞で働けないから金はないし、葬式にも出ない!」と言って電話を切ってしまったのです。私も夫と一緒に妹夫婦の借金を返してきた身ですから、憤る夫の気持ちはよくわかります。

でも経緯はどうあれ、亡くなったのは夫の実の母親です。「もし葬式に出なかったら、夫は後悔するのでは?」。まず、そんな心配が頭をよぎりました。ただでさえ脳梗塞という大病を経験して働けなくなり、ままならない言葉や体の動きにストレスを感じているだろう夫に、これ以上精神的負担をかけたくない、というのが私の正直な気持ちです。「葬式の費用のことはともかく、葬式には出た方がいいんじゃない?」とやんわり夫にすすめてみましたが、夫は「俺は行かない」の一点張り。

夫はもともと有言実行の人でしたが、脳梗塞を患ってからは頑固さに磨きがかかり、一度言い出したら聞かないところがあります。葬式当日まで何度となく夫に声をかけてみましたが、やはり夫の気持ちは変わらず、結局、葬式には私と24歳の長女の2人で参列することになりました。葬儀といっても、付き合いのあった親戚だけが火葬場に集まり行なう「家族葬」的なものです。遺影の中の義母は、私の記憶にあるよりもだいぶ年老いていて、いつもおしゃれに染めていた髪は真っ白。でも、どこか子どものようなあどけない笑顔を浮かべていました。義妹によると、義母は認知症が進んでいて、娘である義妹のこともよくわからなくなることがあったそうです。

「お兄ちゃんはなんで遊びに来ないの?」。死期が近づいたころ、義母はそう言ってしきりに夫のことを話題に出していたのだとか。その話を聞いて、「やはり夫を連れてくればよかった」と思わずにはいられませんでした。

何があっても、自分を生んでくれたたった一人の母親。その最期の見送りを、夫にさせてあげられなかったことがとても心残りです。今年のお盆には、いつもなら家で留守番をしている夫も引っ張り出し、家族皆でお寺にお墓参りに行こうと思っています。

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