20代で結婚、2男1女を授かり、主婦として暮らしてきた中道あんさん。でも50代になると、夫との別居、女性としての身体の変化、母の介護...と、立て続けに「人生の転機」が訪れます。そんな激動の中で見つけた「50代からの人生を前向きに過ごすためのヒント」。
去年の秋にお母様が他界した中道あんさん。春には墓じまいをし納骨も済ませているのですが、以前の習慣からか初盆に何もしないというのも心が落ち着かなくて...。
【前回】苦手なことは頑張らない。同じ時間を使うなら「好きなこと」に!
【最初から読む】仕組みを作って安心。ひとり時間が多い親の見守り/中道あん
母が去年の秋に他界し、春には墓じまいをして納骨も済ませました。
そして迎えた初盆。
家には仏壇もありません。
幼いころより、1日、15日には家族で墓参りをして、先祖の月命日にはお寺さんが家にお経を上げに来て下さる、というのをずっと見て育ってきたので、どうも心が落ち着きません。
そこで、コロナ禍で行くのを控えていた四天王寺さんの万灯供養に3年ぶりに行くことにしました。
これは先祖供養のための行事で、万灯供養の当日の夕刻、ご先祖の霊名が記されたローソクに火が灯され、時刻になると般若心経に合わせて、僧侶が寺の境内を練り歩きます。
ろうそくの灯が幻想的であり供養の気持ちも高まります。
長男と妹夫婦を誘っていくことにしました。
いつもなら、車をとめる駐車場探しに苦労するのに、すんなりお寺のそばにある駐車場に入れました。
なんてラッキーなことと喜んでいたのですが、お寺の門をくぐって理由が分かりました。
供養に来られる人が圧倒的に減っていました。
ろうそくを買うのにも並ばずに済みます。
「わぁ、人がいてはらへん」という寂しい呟きをして、自分たちでろうそくに親の法名を書きます。
いつもは達筆に書いてくださる係りの人がいますが、それも廃止された様子。
それまで、こういった行事に参加するけれどどこか他人事だった長男が、普段持つことがないであろう筆ペンで法名を書いてくれました。
その字がとてつもなく下手過ぎて思わず吹き出してしまいました。
あんまり言うとご先祖さんにも悪いので我慢していましたが、今思い出しても笑いがこみ上げてくるほどです。
いざ、五重の塔がある伽藍(がらん)内のろうそく立てに向かうと、受付でろうそくを預けるように促されました。
「あの、自分たちでろうそくは立てられないのですか?」と尋ねると、コロナの関係で火を灯すのは係の人が、そして、ろうそく立ての前にはロープが張られ立ち入り禁止になっていました。
なんてことでしょう。
先祖のろうそくに火が灯るのを見られないなんて、どこに向けて拝めばよいのか分からなくなります。
私は、ここに居ても仕方ないなぁと思っていたのですが、来たばかりで帰るのも愛想がないように思いました。
その辺をゆっくり巡っていると、長男が「おじいちゃんのろうそくが運ばれていく!」とろうそくの箱をもった係りの人の後を追いかけていきます。
私や妹夫婦もその後ろに続きます。
箱から取り出されたろうそくが次々と立てられていきますが、いかんせん遠すぎて法名までは確認できません。
すると息子がスマホのカメラを取り出して、できる限り拡大にして法名探しが始まりました。
「ないわ~。見えへんわ~」と言う中、お経が響き渡ります。
ちょうどその時、「あった! 見つけた!」と言う長男。
上手に書いていたら識別できませんが、下手くそがゆえに特徴的で分かりやすかった様子。
これも喜んでいいのか情けないのか複雑な心境でしたが、わが家らしいこと。
拝む対象が分からないという残念な気持ちも吹き飛び、先祖に感謝の気持ちで手を合わすことができました。
それにしても、この時期に何もしないと落ち着かないなんて、血というのは濃いものだと改めて思いました。
肉親だからこそだと思うのです。
これも親が「こうするもの」と教えずとも見せていてくれたからでしょうか。
改めて、感謝。
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