<この体験記を書いた人>
ペンネーム:とらとら
性別:女性
年齢:53
プロフィール:アラフィフ兼業主婦。昔は色紙でよく色水を作って遊んでいました。
54歳になる兼業主婦です。
約50年前、私がまだ5歳の頃のお話です。
私は幼稚園に通っていて、その学級の中でも体が大きなほうでした。
当時は男子よりも力があったためか、学級でも一目置かれていたと思います。
しかしそのせいで「私は強い」「私は特別」なんて妙な勘違いをしてしまっていて、少しわがままな子どもだったと思います。
当時、通っていた幼稚園では、園全体で色水が流行っていました。
色水とは、カメラのフィルムケースに水を入れ、そこに色紙を入れると水の色が変わるというものです。
ある日、私もそれを作って窓際に飾って遊んでいたところ、クラスメイトのCちゃんも先生から新しい色紙をもらって色水を作っていました。
コバルトブルーのような鮮やかな青系の色だったと思います。
私と同じように、Cちゃんの手で窓際に飾られたその色を目にしたとたん、なぜか私はそれが急に欲しくなってしまいました。
私はすぐにCちゃんに「ちょうだい」と言いましたが、作ったばかりのそれをCちゃんもすぐに「はい」と手渡してくれるはずもなく、私はその場で癇癪を起こしていました。
今振り返ると本当に恥ずかしい話なのですが、あのときはどうしてもCちゃんの色水が欲しかったのです。
そのとき、担任だったA先生(当時30歳くらいの女の先生でした)がそっと私のところに来て、声をかけました。
「私ちゃんの色水とてもきれいな色やん。これはもういいん? 捨てれるん」
私はとっさに自分の飾った色水のフィルムケースを見ました。
そこには透き通るような赤い色水がありました。
とてもきれいに色が出ていて、我ながら「よくできた!」と思っていたものだったので、捨てたくはありませんでした。
A先生には「嫌だ」と返しました。
すると、A先生はふっと微笑んで言いました。
「全部自分のものにしようとする前に、自分の手の中にあるものをちゃんと見て、大切にしなさい」
5歳の子どもだった私が、その言葉にハッとなったのを覚えています。
確かに、Cちゃんの新しい色紙で作った色水がきれいで欲しくなったのですが、私は満足のいく色水をすでに持っていました。
そのことをすっかり忘れてしまっていた自分にビックリしました。
その後、私はCちゃんに謝り、私の色水とCちゃんの色水を半分こしてそれぞれ飾って遊びました。
先生は何気なく言ったのかもしれません。
しかし、私にとっては50年たった今でも思い出せるくらい、深い言葉だと思っています。
人気記事:少しの間、高熱で寝込む息子との留守番を実母にお願い。帰ってみると...《石塚ワカメ》
人気記事:《漫画》朝8時に義母が玄関をピンポーン! 新生児育児中の我が家にやって来た親戚御一行<前編>
人気記事:《漫画》仕事を辞めて同棲を始めた娘。ある日届いた「これ以上一緒に暮らせない」というメール<前編>
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。