<この体験記を書いた人>
ペンネーム:yumekafu
性別:女性
年齢:64
プロフィール:今、ウォーキングにはまっています。ウォーキング中にひらめきやアイデアが浮かんでくるので、それが楽しみで頑張っています。
小学校教師として6年生を受け持っていた26年前のことです。
私(当時38歳)のクラスに成績がよくてリーダー格のYさん(当時12歳)とMさん(当時12歳)という男の子がいました。
進級した頃は反抗的で、私が少しでもミスをするとすぐに指摘してきたり、納得がいくまで質問を続けたりしました。
2人の言っていることは筋が通っているので、私もできる限りの対応をしていましたが、そのたびに時間を取られるので「やりにくいなあ」というのが正直な気持ちでした。
でも、1学期半ば頃から2人の態度が変わり始めました。
私にいろいろと言ってくるのは同じでしたが、言い方が素直になってきたのです。
理由は分かりませんでしたが、私にとってはいいことなので、密かに喜んでいました。
6月のある日、職員室に置いてある教材を運んでもらおうと、力のある男の子5、6人に手伝ってもらいました。
職員室に向かって校長室のそばを通ったとき、Mさんが突然話し出しました。
「僕たち、6年生になってからまだ校長室に呼ばれてないね。5年生のときは何回も行って怒られていたよね」
笑いながら話す彼の言葉を、ほかの子たちも相槌を打って聞いていました。
そして今度は私に向かって、ニコニコしながらこう言ったのです。
「先生は、僕たちが何か悪いことしても自分で叱るよね。僕たちのことあきらめないよね」
急に言われてびっくりしましたが、そんなふうに思っているんだ。そんなに嫌われてもないかな? とちょっと嬉しくなりました。
「誰のこともあきらめないよ。だから、悪いことをしたときは怒るよ。校長先生より怖いからね〜」
その後、7月のある日、体育の授業が終わって、体育係の子どもたちと道具の片づけをしながら話していると、Yさんが話しかけてきました。
「先生は、僕たちが間違いを注意しても怒らないよね。間違いに気づいたらちゃんと謝るし。それに誰かを叱った後、普通に戻るのがとっても早いよね。その後すぐに笑うから気持ちがいいよ。僕、先生のそんなところいいと思う」
私に批判的だったYさんがそんなことを言うので、私はまたびっくりしてしまいました。
そんなふうに私のことを見ていたんだ。だからこの頃は素直になっていたんだね...私は驚きと喜びを同時に感じながら、Yさんの話を聞いていました。
2人とも、何気なく自分の気持ちを言っただけだと思います。
でも、私にとっては目からうろこの大きな出来事でした。
私が感覚だけで無意識にしていたことを、2人が明確な言葉で私に教えてくれたのです。
そして、それが子どもたちにとっていいことなのだと確信させてくれたのです。
「子どもたちをあきらめない。見捨てない。子どもたちの可能性を信じる!」
「どんなに叱っても怒っても、それはその時だけのことで、すぐに切り替える。これからも切り替え上手な先生になる!」
2人に言われたことをきっかけに、私はこの2つを意識して子どもたちに接するようになりました。
このクラスの子どもたちは、1人1人が進級してきたときとは表情や言葉が変わり、とても成長した姿を見ることができました。
私にとっても、教師として充実感を感じた1年となりました。
2人に言われた嬉しい言葉はその後の大きな力となり、私の教師人生で守り続ける大切な心得のひとつとなりました。
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