【猫の最期の食事】警戒心いっぱいだった保護猫。時間をかけて心が通うようになったが、病魔が...

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:さんた
性別:女性
年齢:46
プロフィール:子育て中の主婦です。

【猫の最期の食事】警戒心いっぱいだった保護猫。時間をかけて心が通うようになったが、病魔が... 16.jpg

実家に住む60代の両親は大の猫好きです。

猫好きの両親が飼っていた保護猫、てんちゃんは一年間の闘病の末、2010年の冬に亡くなりました。

2009年の夏、実家の庭でてんちゃんを保護しました。

全身、目も耳も汚れていたてんちゃんを病院へ連れていき検査したところ、猫エイズ陽性でした。

獣医さんによると、猫エイズによる難治性の口内炎になっていて、今後は投薬を欠かせないとのこと。

私は一緒に住むのは難しいと思ったのですが、両親はぜひ一緒に暮らしたいと言うので、てんちゃんを家族として迎えました

てんちゃんは人間に対して警戒心が強く、なかなか人前に姿を現しません。

お世話する両親の前にさえ、めったに姿を現さず、いつも2階の物置部屋の隅に隠れるようにじっとしていました。

両親はそんなてんちゃんを無理に触ろうとせず、ときどき優しく声をかけてご飯とトイレの手入れだけは欠かさず行っていました。

そんな様子だったので、保護して半年ほどは投薬がなかなかできませんでした。

そのうち、てんちゃんが日中を過ごす物置部屋には、よだれのシミができるようになりました。

口内炎が悪化していることは明らかでした。

それから長い通院生活が始まりました。

ちっとも人馴れしないてんちゃんに、どうにか薬を飲ませなければなりません。

しかし、柔らかいフードに薬を混ぜても、てんちゃんは絶対に食べないのです。

私はこれ以上の世話は無理だと諦めかけていましたが、父は毎日、隠れ場所の物置部屋の前で、根気よくてんちゃんに話しかけていました。

とても大事な猫ちゃんということ、薬を飲んで欲しいこと、そのために隠れずに出てきて欲しいこと。

初めの頃は父が一方的に話しかけているだけだったのですが、1時間以上座って語りかける父に根負けしたのか、なんとてんちゃんは3日目にして部屋から出てきたのです。

そして、父の手から薬入りのご飯を少しずつ食べてくれるようになりました。

毎日30分は語りかけないと出てきてくれませんでしたが、父は根気強く会話を続け、薬を飲ませ、病院へ連れて行きました。

てんちゃんの病状は回復することはなく、少しずつ衰弱していき、最後には父の膝の上で眠るように亡くなりました。

決して心を開かなかったてんちゃんが、最後は父の手からご飯を食べてくれたこと、父の話をちゃんと聞いていたこと...

父にとって、てんちゃんと過ごした時間はかけがえのない宝物です。

てんちゃんにとってもそうであったと信じたいです。

今でも実家の物置部屋を見ると、てんちゃんがそこにいるような気がして温かい気持ちになります。

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