<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ひろえもん
性別:女
年齢:57
プロフィール:関西の最果ての港町で3匹のネコとのんびり暮らす普通のおばちゃんです。
ヨーロッパの某都市で旅行サービス業に従事していた頃、私たちなんて使い捨てのティッシュペーパーでしかないのかな、と思うようなことが多々ありました。
10年以上前、当時40代の私がある高級ホテルに新婚のお客様をご案内したときのことです。
部屋の確認と滞在の説明という、いつものルーティンで帰れると思ったら、なんと新婚の方へのホテルからのプレゼントのシャンパンに添えられていたカードが「TO MR (奥様の名前)」になっていました。
それが奥様の逆鱗に触れて、とんでもない目に遭うことに。
どうやらツアーの予約名が奥様だったため、ホテルの担当が勘違いしたようです。
「一生の思い出になるはずの旅行で、不愉快なお気持ちにさせてしまったことを心からお詫び申し上げます」
必死に謝罪したのですが、それだけでは終わりませんでした。
奥様は旅行会社からの書類を私に突きつけました。
「見て! この書類だってギザギザに切れてるじゃないの!」
よく見ると、臨時のお知らせが、切れ味の悪いハサミで切ったのか手作り感満載でした。
少なくともお客様にお渡しする見た目ではありません。
私はベッドとテーブルとソファに挟まれた狭いスペースで、直立不動のまま約1時間立たされ「どれだけ残念か」をお聞きしては謝り続け、最終的には「ほら、今だってアナタ! ベッドに座ってる!」と怒鳴られてしまいました。
「どちらかというとベッドとソファとテーブルに阻まれて監禁されている状態ですが」
心の中で呟やきながら「とんでもございません」とさらに謝り続けました。
頭はクラクラしていましたが、こんな状況下で座れるわけがありません。
「明日、支店長とあなたでホテルに謝りに来てちょうだいっ!」
「そんなことしたら明日もここで待ってないといけないし、やめようよ〜!」
奥様を諫めた旦那様の言葉で、やっと怒りを収めていただいたようでした。
私などはまだ幸運な方で、空港からの渋滞に腹を立てたお客様に、ホテルの鍵を投げつけられた同僚もいます。
しかも顔面めがけて。
カードキーのご時世に、偶然にもその鍵は部屋番号を彫りこんだ長さ20㎝のアクリル製のキーホルダー付き。
同僚は「ヌンチャクかと思った!」と笑っていましたが、目に当たって失明しなかったことが不幸中の幸いです。
渋滞のような不可抗力でも、怒りの捌け口は私たちなのです。
ディナーの添乗で現地のボーイさんがワインをこぼしたことに腹を立てたお客様に、窒息するほどネクタイを引っ張られた同僚もいました。
何か不快なことがあった場合、言葉が通じないと腹が立っても反論できずストレスが溜まります。
そうすると怒りの矛先が向かうのは日本人です。
ある同僚は空港のチェックインなど誠心誠意お手伝いしたのに、最後にたまたま腰痛だったため荷物を持つのをお断りしたことでお客様が不機嫌になり、出国審査の列から大声で「バ〜カ!」と罵られたそうです。
お年を召した方の場合はお持ちすることもありますが、あくまでも個人的なサービスで規約ではないのです。
「『バカ!』じゃなくて『バ〜』って伸びてた」としょげつつも仲間の笑いをとっていた同僚。
毎日、落ち込む話満載でしたが、同僚がみな豪快でユーモアに満ちて、悲惨な話を笑い話に変える人ばかりだったので救われました。
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