アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。今から20年以上前、私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。
【前回】「坊さん呼んだら金かかる!」お経のカセットテープを流して済ませた父の納骨/かづ
【最初から読む】アッシー・メッシー・貢君だった彼が突然父に結婚の挨拶! 夫との馴れ初め/かづ
父の遺産の相続放棄に印を押したわずか1~2カ月後、「兄ちゃんが金が足りんって文句言うて来てるんや...」と、下弟から力無い声で電話が来た。
下弟が言うには、私が相続放棄した後にすぐさま上弟と遺産分けをした。
だが、上弟は手にした遺産で今までの全ての借金を返済したので手元にはほぼ残らなかったらしい。
そして遺産分けの際に父の車をどうするかと言う話しになり、当時でだいぶ乗っていた車だったが250万円クラスの車だったので上弟が欲しいと言ったそうだ。
下弟は新車で購入した車がまだ数年しか乗っていなかったのと、趣味の大型バイクも所有していたので、希望するのであればと上弟に譲る事にしたらしい。
上弟はそれまで乗っていたボロボロのほぼタダ同然で手に入れた軽の中古車を売り払い、そのまま名義変更して父の車は上弟の物になった。
欲が先に来ている奴は考えが浅いのか、今まで軽自動車に乗っていたのに普通車に乗り換えると言う事は、保険料も上がれば税金も上がる。
父からの遺産を借金返済で吐き出した上弟は、手元に金が残ることなく右から左だったので、さながら大金を貰った実感が薄かったのだ。
いくらかでも現金が手元に残っていれば相続した自覚もあるだろうが、上弟の手元にあるのは金食う虫の車が残るだけとなり、上弟は『負の遺産』を相続させられたと周りに言いふらし始めたらしい。
上弟は会社で「金掛かってしゃーない!」と、まるで下弟の為に引き取ってやったと言わんばかりだった。
下弟は言う。
「お父さんの財産ってほぼ保険金なんや。保険金は受取人が全部僕になってたから、そもそも兄ちゃんに分けてやらなあかん事なんて無いんや。そやけどそんなん兄ちゃんが黙ってる訳が無いから、正直言うて半分以上兄ちゃんに渡したんやで? そやけど借金の返済で右から左やったから、兄ちゃんは貰った自覚が無いんや! ましてや僕がまだ財産を隠し持ってたんちゃうかとまで思ってる。」
まぁ、「姉ちゃんは嫁に行った身」と言われて相続放棄を迫られた身としては、そんな事どーでもいいし知ったこっちゃない。
それに正直な話、葬儀に関しての収支や保険金の明細を明らかにして貰っていないので、いくら入って来ていくら出たのか、下弟を疑っていないし相続放棄した今となってはどうでもいいが、上弟としては下弟が自分よりも大金を手にしているはずだと思ってもおかしくない。
逆に言えば、上弟ならば必ず自分ならそうする(財産を隠す)だろうからこそ、下弟を疑っているのだ。
私は「無視するか、全ての金額を明らかにして明細書を見せるしか無いんじゃないの?」と言った。
が後日、下弟は上弟にいくらか(数百万円)を渡す事で納得させたと聞いた。
私は言葉は悪いが「上弟に金を渡すって事は『盗人に追い銭』みたいなもんやん」と言った。
下弟は「これ以上会社で色々言われる事は、お父さんに恥かかせることにもなるから...」と言ったが、ある意味騒げばポンと金が出て、それでも特段生活に困る事の無い下弟を、今後上弟が事ある毎にと無心するのではないかと嫌な予感がした。
それから数週間後の事、下弟から連絡が入り、上弟嫁が産気づいたが死産だったと連絡が入った。
男の子だった。
葬儀場に着くと、小さな棺の前に妊婦服のままの上弟嫁、その横に無言で上弟嫁の母親が椅子に座っていた。
上弟は何やら大きな声でがなり立てながら、何が原因でこうなったのかが分からんから病院を訴えると言う風な事を怒鳴っていた。
上弟嫁は私を見るなり泣き叫びながら駆け寄って来て、私に抱きついて泣き崩れた。
私は上弟嫁の肩を抱きながら椅子に掛け、「頑張った。頑張った」と背中を撫でた。
私にとって甥にあたる彼には、亡き父の名の一文字がつけられた。
全てが終わった数か月後、あの下弟が追加で上弟に遺産を渡した当時に何があったのかを上弟嫁が話して聞かせてくれた。
上弟は嫁のお腹の子に異常が見られたことを知り、色々病院を変えたり、新興宗教に入信して多額の費用を使っていた。
【困った時の神頼み】とも言うし信心が悪い事だとは決して言わないが、医療の現場にいた身としては、そんな土壇場でコロコロ病院を変えたり、宗教に多額の費用を使っても治る訳がない。
けれども父が末期がんだと診察されて余命宣告を受けた際に、上弟は下弟と一緒に他の病院に転院させようとしたことを思い出した。
結局それで下弟からの追い金も使い果たし、甥っ子の葬儀もサラ金から借りて支払ったとの事。
甥っ子が亡くなった事は気の毒であり、母親である上弟嫁の心痛は想像以上であろうけれど、ため息が出た。
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