<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ひろえもん
性別:女
年齢:56
プロフィール:4匹の猫と夫と海辺の街で暮らすフツーのおばちゃんです。
20年前、私も夫もまだ30代の頃。
夫の元交際相手から突然の電話がありました。
結婚を知って、急に元彼である夫への執着心が湧いたのか、それから毎晩12時きっかりに留守番電話に愛のメッセージを残すようになったのです。
「まだ愛してる」
「息子が本当の父親のように慕っている」
なんてことを思い出の曲とともに語ります。
夫によると独身の時に交際していた既婚女性で、当時2歳の息子を連れ、よく遊びに来ていたとのこと。
毎晩12時に電話してくるので、勝手に「シンデレラ」と呼んでいました。
夫は子どもと動物には好かれるタイプで、その子もとても懐いていたそうです。
ただ、「離婚できないから旦那をホームから突き落として殺して」と頼まれ怖くなり、結局最後は「離婚訴訟に不利」と都合よく捨てられたらしいのです。
「離婚しないと兄貴と一緒にお前を殺しに来ると言っている」
私は留守電も無視していたのに、夫がいちいち報告してきます。
「なんでアンタじゃなくて私がシンデレラから恨まれるワケ?」
夫から報告されるたびにイライラしていました。
しかし、それ以来、自宅で腑に落ちない出来事が起こり始めたのです。
お気に入りのぬいぐるみの脚にタバコの火を押し付けた痕があったり、部屋に生活感溢れる女性用下着やヘアゴム、カチューシャ、子どものおもちゃなどが転がっていたり。
夫の姉に相談すると「幼い頃貧乏やったから、弟はなんでも拾ってくる癖がある」とのこと。
しかし「こんな普通の下着どこに落ちてる?」と謎は深まるばかり。
ある日、居間にスーパーヒーローのフィギュアが転がっていました。
きっと夫が拾ってきたのだろうと、それを友人の5歳の息子にあげたのです。
そのことを夫に告げた翌日、友人から電話がありました。
「今日だんなさんが来て、ゲーム機のバッテリーを奪って行ったって息子が泣いてるのよ」
夫はそれほど仲の良くない友人宅に慌てて赴いた理由...その時、私の頭にこんな光景が浮かびました。
愛人の子どもにフィギュアを取り返してこいとごねられ、友人の息子に返せと迫ったが、その子が断固として拒否したため、担保としてゲーム機のバッテリーを奪う極悪非道な夫...。
それからも見知らぬ下着は現れては消え、最終的には私の下着まで消えました。
そのことを夫に訴えると1週間後に現れるというような現象が起こり、いったい私は何人と暮らしているの? という生活が続きました。
そして、ついに夫がシンデレラと電話でイチャイチャする場面に遭遇したのです。
やはり関係が再燃していたようです。
私が責めると彼女から「自殺する」と脅されたというのです。
「殺しに来るほどの女が自殺? 妻と下着を共用する図太い女が自殺? そんな奇妙なシンデレラと続いてるアンタが恐ろしいし、離婚させてもらうわ! かぼちゃの馬車でもチャーターして迎えに行け!」
そう叫ぶと夫はとんでもないことを真顔で言いました。
「シンデレラに捨てられ、お前にまで捨てられたら俺はどうやって生きて行けばええねん?」
その瞬間、この結婚失敗だったなと思いました。
愛人の気持ちも妻の気持ちも考えず、あくまでも自分の気持ち優先の夫に驚きを通り越して呆然としてしまいました。
あれから20年、シンデレラは未だ離婚もしていないそうです。
寂しい時に慰めてくれる都合のいい男として利用されるだけと夫も自覚しており、彼女の薬物中毒の過去への不信感もあって関係は終わったようです。
愛人の感情も夫の感情も決して嘘ではないはず。
ただ、残念ながら最後まで一緒に生き破滅するか、もしくは救い出すだけの勇気はなかったようで、夫はまだ私の隣にいます。
私もそんな不器用な夫を見て、なぜか励まされることもあります。
今のところは。
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