<この体験記を書いた人>
ペンネーム:れご
性別:女
年齢:52
プロフィール:義母が入所している介護施設。そこで人気者になってしまった夫はどうやら困惑しているみたいなのです。
義母は現在介護施設に入所しています。
夫は月に数回義母を訪ね、さらに私たち家族とも月1回ほどお見舞いに行っています。
そこで、困ったことが起きました。
実は我が夫、その介護施設に入所するご婦人たちに大人気なんです。
あるご婦人からは息子に間違えられ「たくや~」と抱きつかれます。
別のご婦人からは「しゅんくん♪」と熱視線を向けられ、お茶に誘われることも。
どうやらこれは昔の恋人に勘違い(?)されているよう。
さらに、こうした感情って、どうやら伝播するらしく、夫に近寄ってくるご婦人が一人二人と増え始めたんです。
悪いことに、この介護施設の入所者さんは「ほとんどが女性」。
時には夫を「取り合う」ような状態にまでなるようなのです。
例えばある日のこと。
夫はいつも決まった曜日・時間に訪問しているのですが、夫を心待ちにしていたのか、あるご婦人が面会室の一番手前、玄関近くで夫を待ち構えていました。
すると、それを察した別のご婦人が「私のタクヤになんかご用?」と詰め寄り、ちょっとしたいざこざに発展したんです。
...とはいえ、私たち家族としては、そんな様子を微笑ましく、時に「凄いな~」くらいに思って傍観していました。
しかし...夫は違っていたんです。
ある日、介護施設をあとにして車に乗った途端「だあああ~~~」と、ビックリするくらいに大きなため息をつく夫の姿が。
元々、夫は楽天家。
ここまで大きなため息をつくのは珍しいので「どうしたの?」と聞いてみました。
すると「あれ見てなかったの?」と。
そして、驚くほど饒舌に話し始めるではありませんか。
「俺が来ても最初はさ、みんな普通だったの。でも、あるご婦人と顔見知りになったら、そのご婦人が毎回挨拶してくれるようになったの。その人は俺を俺とわかっているから何も問題なし。かあさんとも仲良くしてくれてるし」
「でも、他のご婦人は違うの。中には俺を昔の恋人と勘違いして、人が見ていないと手を握ってきたり、おしりを触ったり。それに部屋で話したいとか言いながらグイグイ迫って来ることだってあるんだよ! それで施設の人に何度助けてもらったことか。また別のご婦人は、俺を息子と思って話しかけてくるんだ。それはいいの、でも、その人の頭の中で、俺は幼い息子のままみたいでさ『抱っこ抱っこ~』とか、『おやつですよ~、アーン』とか.....。だからさ、違う違う~~~!!! ってなるでしょ。あ~もうヤダ~~~助けてくれ~~~」
夫はそれまでのうっぷんを晴らすかのように一気にまくしたてました。
どうやら、一人でお見舞いの際に、大変な思いをしていたようです。
そして、それをこうやって詳しく聞くと......確かに辛い。
私なら確実に「ヘルプミー!」と叫んでいることでしょう。
そんなこととは露知らず「ほほえましいな~」なんて笑ってみていた私、反省ですね。
この日以来夫は、ご婦人たちが待ち伏せできないよう撹乱作戦を開始。
決まった日時に行かず、日曜日を土曜日に、午前中だったのを午後や夕方にするなどの対処をしてみました。
これが功を奏したようで、ほどなく待ち伏せはなくなりました。
しかし、それでも偶然ご婦人に出くわすことがあります。
そんな時には義母の部屋にすぐに入って立てこもります。
そして帰りは音を立てずに素早く立ち去る。
今はそんなスパイ大作戦? さながらの方法で乗り切っています。
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