<この体験記を書いた人>
ペンネーム:かめ
性別:女
年齢:42
プロフィール:中学生2人の子供を持つ主婦。ようやく仕事もパートから正社員になり忙しい日をすごしています。
近距離に住む義父母は仲睦まじい夫婦で、いつか私たち夫婦も年老いたらあんなふうになりたいねといえるような関係でした。
義父は義母よりも10歳上。
二人が散歩をするときには、義母が義父の背中に手を回し支えながら歩きます。
その姿はほほえましいものでした。
その関係がおかしくなったのは、義父が長年勤めていた企業を定年退職し、家にいるようになってからです。
専業主婦の義母は、家にいるだけでは早くぼけてしまいそうと、二人で趣味を見つけることにしたそう。
そこで義母の友人に相談したところ、勧められたのは「山菜取り」。
「健康的なうえに山菜も見つけられて一石二鳥だよ」との言葉に、夫婦で始めることにしたんです。
ところが、足腰の弱い高齢の義父にとって、険しい道なき道を登ったり降りたりする山道はとても難しいこと。
いつしか義父は山菜取りには行かなくなってしまいました。
一方、すっかり山菜取りにハマってしまったのが義母です。
義父の病院に付き添う日でも「午前中は山だから午後になったら行く」。
孫の運動会にも「雨で山にいけなかったら運動会に行く」。
親戚の法事にも「雨で山にいけなかったら行く」。
終始この調子なのです。
孫は「雨だったら運動会もないよ」と呆れ、親戚にも「還暦過ぎて山に取り憑かれた」と陰口を言われる有様になってしまいました。
義母本人は山に夢中なので、誰がなんと言おうとどこ吹く風。
まったく気にしていません。
ただ、どうしようもなく寂しい思いをしているのは、足腰が悪く留守番している義父です。
これまで専業主婦の義母が食事の支度をしていましたが、義父も若いころ洋食店でアルバイトをしていたため料理は得意です。
しかし、フライパンを振る力も弱く、長時間立っていることも難しいような状況です。
義母からは「山に行ってくるからお父さんのお昼ご飯お願いね!」と私に連絡が来るのですが、主人も仕事、私も正社員になったばかりの忙しいときです。
平日の昼間、時間をとって義父の家に駆けつけることは...正直難しいんです。
あるとき、早めにお昼休憩に入ることができたので義父の様子を見に行くと、「来てくれたのか」とうれしそうに玄関まで出迎えてくれました。
「ああ、寂しかったんだな」となんだか感慨深くなりました。
その日は一緒におそばを食べに行って、義父の昔話をたくさん聞き、笑い合って自宅に戻りました。
すると、義母が「おかえり! いい山菜取れたからね! 今からてんぷら作るよ!」と張り切って出迎えてくれました。
正直、こんなに生き生きとしている義母は、この年になって初めて見ることができました。
義母は今を謳歌しています。
寂しく待っている義父のことを思うと切なくなるのですが、義母が元気に帰ってきて、義父においしい山菜料理を出してくれることもまた事実です。
私たちの生活と、時間が合わずに困ることも多々ありますが...2人のこういった様子を見ると、私たちもできる限りサポートしながら、上手にやっていくしかないのかなと、感じています。
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