<この体験記を書いた人>
ペンネーム:もよこ
性別:女
年齢:52
プロフィール:子育てはほぼ終了。これからは自分の人生を楽しみたい50代。
高校生の息子はなぜか火を怖がり、いくらすすめてもガスを使っての料理をしません。
大学生になって1人暮らしを始めたら自炊もしなくてはならないので、簡単な料理くらいは作れるようにならないと、と言ってはいるのですが、「遠慮しとく」とまるで聞く耳を持ってくれないのです。
インスタントのカップ麺だけでなく袋麺でも、どんぶりに入れポットで沸かしたお湯をかけてレンチンで済ませるので驚かされます。このままではレパートリーは冷凍食品とレトルトのカレーだけだな、とため息をついていたのです。
そんなある日、滅多に病気をすることのなかった私が風邪をこじらせて寝込みました。
夜になっても起きられず、夫には外で食べてきてくれるよう頼み、帰ってきた息子にもお弁当でも買って食べてと言い、寝室にこもっていました。
熱のためうとうとしながらも、何かキッチンでガチャガチャとしている音が聞こえたので、夫が帰ってきたのかと思っていました。
どのくらい時間がたったのか、小さなノックの音がし、薄く目を開けると息子がドアから顔を覗かせていました。
「どうした? 何か食べた?」と聞くと「おかゆ、作ったんだけど食べられる?」とお盆を手に持っていました。
「えっ? おかゆ?」と驚き、夢でも見ているのかと思って体を起こすと、息子は照れ臭そうにベッドのわきにおかゆの入った土鍋と茶碗を置き、「食べれるだけ食べて、残ったら置いといて」と言い残して部屋から出て行きました。
小さな土鍋に入ったおかゆを茶碗に入れて眺めながら、朝から何も食べていなかったことを思い出し、少しずつ口に運んでいるとほっこりと温かい気持ちになりました。
気がつけばまた眠っていたようで、次に目覚めた時はお盆も下げられていました。
翌朝、なんとか起きられるようになって息子に「おかゆのおかげで治ったよ、ありがとう」と言うと、「YouTubeで『おかゆ、作り方』って入れたらすごいいっぱい出てきて、どれがいいのかずっと見てたからめっちゃ時間かかってしまった」と笑い、「でも、意外と簡単だったから他の料理もYouTubeで検索してみる」と、登校して行きました。
私が食べた茶碗などもちゃんと洗ってふせているのをみると、いつの間にか成長してるんだな、と嬉しいような少し寂しいような気持ちになりました。
ただ、コンロまわりだけは吹きこぼしのせいかすごいことになっていて、おかゆの味を思い出し、それをスマホ片手に作っている息子の姿を想像しながら、せっせと掃除をしたのでした。
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