壊れてしまった携帯電話の代わりになるものは...母への小さなプレゼント/中道あん

数か月前に母の携帯がとうとう壊れました。

本当に残念そうな顔をして壊れた携帯を眺めている母。「新しいものを買って欲しい。」と言われました。

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しかし、手続きをして、何とか使っていた昔のガラケー。残念なことに、同じ機種はもう販売されていません。たとえ簡単に操作できる機種を買っても、使いこなせるまでには時間がかかりますし、どれだけの人の手を煩わせることか。それを考えると憂鬱になりました。

これまで、身近に携帯電話があることで、周囲への迷惑行為が多々ありました。知人への深夜の迷惑電話、私との連絡が取れないからと110番通報、妹へ機能がパンクするほどに留守電をかけたり...。

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そういったこともあって施設と相談をして、しばらくこのまま様子を見ることになりました。用事がある時には施設職員が母の代わりに電話をかけてもらうようになったのですが、すると今度は施設事務所に「娘と連絡をとりたいと」と、度々訴えるようになったそうです。今度は「皆さん忙しいからね」と母に注意をすることになりました。

そんなことが何回もあったある日、施設に面会にいくと部屋で1枚の紙きれを渡されました。それは、ネットで送った日用品の納品書の裏紙に、

・ウーロン茶

・ポリグリップ

・納豆

・梅干し

・のり

・お金

・○○〇から電話がほしい

・接骨院の先生と会って欲しい

・今度いつ来てくれる

と箇条書きが並べてありました。

面会のたびに、必ず差し入れ等をしています。なので、わざわざ書いてもらわなくても欠かすことはありません。

ですが、きっと寂しいだろうな。不安なのだろうな。

母のその時の気持ちを、その時欲しいものをリストにしたのだろうと感じました。「電話かけて」の願いはなかなか叶えられないので、書くことで心の安定を保っているのではと想像できました。その文字を眺めていると、愛らしいやら、哀しいやら、なんとも複雑な心境になりました。

現在の通信手段はメールやラインが多く、私達も文字を"書く"機会が格段に減りました。

だからこそ、私は意識して今日のToDoリストや、今年の目標などを、文字として書くことにしています。書くことで頭の中を整理出来たり、自分の気持ちに気づいたり、気分がスッキリするものです。

まだ母に書くことへの意欲が失われていないのならば、書くことが習慣になればいいなと閃きました。

そこで、文字を書くことがもっと楽しくなるような物を探しに雑貨屋さんに行きました。すると綺麗な模様の和紙が目に留まったのです。便箋にも良さそうな素敵な和紙で作られた折り紙で、ちょっとしたおやつを乗せるお皿代わりにもなりそうです。同じような封筒と一緒に購入しました。

今度の面会時にはそれを届けに行こうと思っています。喜んでもらえるといいな。

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中道あん

「女性の生き方ブログ!50代を 丁寧に生きる、あんさん流」主宰。Ameba公式トップブロガー。結婚22年で夫と別居。自立した人生を送るため、正社員として働きだしました。社会人の長男、大学生の長女と同居しています。要介護2の実母は3年半同居生活の後有料老人ホームにて暮らしております。

中道あんさんのブログ:アラフィフの生き方ブログ|50代を丁寧に生きる、あんさん流

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『50代、もう一度「ひとり時間」』(KADOKAWA)

20代で結婚、2男1女を授かり、主婦として普通に生きてきた。でも50代になると人生の転機が頼まれもしないのに訪れる。夫との別居、母の介護、女性としての身体の変化、子どもたちの成長。そこから見つけた「ひとりの楽しみ」をあますところなく伝え続ける、「あんさん」流のアラフィフライフ。50代からの人生を前向きに過ごすためのヒントが満載。

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