<この体験記を書いた人>
ペンネーム:NUTS
性別:女
年齢:53
プロフィール:結婚27年目の会社員。夫は自営業で2人の子どもがいます。
もう今から30年くらいも昔の話です。
夫は8歳年上で、付き合いだした時、私は24歳、彼が32歳でした。
私にとって夫は、彼氏というよりも大人の男性で、私が「お付き合いしてもらっている」と思っておりました。
私はもともと淡泊で、よく言えば大人しく、喜怒哀楽の表現も分かりにくいと言われるタイプです。
夫も静かな人で、会話がなくても気にしないタイプ。
大人な感じの静かな落ち着いたお付き合いをしていました。
そんな彼の「余裕」に憧れていたものでした。
そんな時期、初めて夫が仕事で海外に行きました。
行先はハワイです。
帰ってきてから一緒に食事に行き、あちらでの食事が口に合わなかった、時差ボケのまま仕事がつらいなどとポツポツ話した後、お土産を渡してくれました。
初めての彼からのお土産です。
大きなビニール袋で2つありました。
1つ目は チョコレート、定番の茶色の箱のアレでした。
定番でもおいしいのでOKです。
そして2つ目はご当地Tシャツ。
これもハワイの定番ですが、結構可愛いものもありますよね。
私も観光でハワイに行った時には何枚か買いました。
期待しつつ開けてみると、全体が濃いピンクで、胸にでかでかと白抜き文字で「HAWAII」と書かれています。
ひきつりながら「ありがとう」とは言ったものの、さすがに外には着ていけないなと思っていると、夫から一言。
「俺も、紫の買った」
まさかのおそろい発言です。
この瞬間、私の「彼は大人の男」というイメージがガラガラと音を立てて崩れ去りました。
「ありがとう」と曖昧に笑いながらも、私の頭の中はパニックでした。
「一緒に着たいのだろうか。でも、さすがに怖くて聞けない。着たいと言われても困る。ピンクと紫って漫才師みたいじゃん」
彼の思ってもいなかった一面に戸惑うばかりでした。
でも私とおそろいで着たいと思ってくれたんだと、彼の気持ちにキュンとしました。
彼も「お付き合い」に浮かれてくれているんだなと。
ちなみに、私はピンクが一番苦手な色で、洋服やバッグなどでピンクのものを身に着けることはありません。
もちろん「彼とおそろい」などのキーワードを言ったこともありません。
彼の私に対するイメージって一体どういうものなのか、次に会った時に彼が紫のTシャツを着て来たらどうしようとか想像すると、何だかおかしくなってしまいました。
大人な彼に合わせようと思っていた私の気持ちは、このことがきっかけで消えてなくなりました。
さて、次に会った時、着てこなかったですよ、彼。
私も着ませんでしたが、残念なようなほっとしたような。
それきり、そのTシャツの話はしませんでした。
でも、結婚後に彼の衣類の中に紫地に「HAWAII」と書かれたTシャツが見えた時、大切にしてくれてたんだなとほっこりしました。
今は私のと一緒にタンスの奥に眠っています。
その後、お弁当の入るバッグが欲しいとつぶやけば、自転車の前のカゴには到底入らない(自転車通勤でしたので)ほどの、革製の大きくてずっしりしたバッグをプレゼントされました。
また、「暖かいからいいよ」と工事現場で着るようなメンズLサイズのベンチコート(ちなみに私のはえんじ色で彼は黒を持っています。これもおそろい)を買ってきてくれたこともありました。
いつも少し残念な彼のプレゼントですが、彼なりに私のことを思って選んでくれているのだなと思うと無下にもできません。
結婚しても変わらないでいてくれてありがとう。
あ、受け取った時は「あ、ありがとう」と曖昧に笑いつつ、今でも少しキュンとしていますよ。
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