「自分でカッターで...」別れ話で彼が豹変。「死の恐怖」すら感じた20代の恐ろしくも切ない恋の話

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:はるかの
性別:女
年齢:43
プロフィール:夫と中学生の息子と暮らすパート主婦。

「自分でカッターで...」別れ話で彼が豹変。「死の恐怖」すら感じた20代の恐ろしくも切ない恋の話 24.jpg

独身時代、私が住んでいた実家は大阪の伊丹空港の近くでした。

誘導灯がきらめく美しい滑走路の夜景が見られる場所があり、そこが私のお気に入りのデートコースでした。

そんな伊丹空港が、最近リニューアルしたというニュースをテレビで見て、ふと私が24歳だった頃の恋愛を思い出しました。

当時、付き合って5年ほど経つ1歳年上の彼がいたのですが、なんとなく価値観の違いを感じ始めていた私は、彼に何度も別れ話をしていました。

しかし、毎回引き止められ、私もつい情に流されてしまい、ズルズルと交際を続けている状態でした。

しかし「このままではいけない」と覚悟を決め、改めてきっぱりと別れを告げ、距離を置くことにしました。

それからは彼からのメールも電話も無視し続けていたのですが、ある日ついに無視できないメールが来てしまったのです。

「このまま会えないなら生きていても仕方がない。今から死にます」

さすがに怖くなってすぐ彼に電話をし、とりあえず明日会って話そうと伝えました。

次の日、彼が一人暮らしをしているアパートに行きました。

まずは外に食事に行くことになり、部屋着から着替えるためにトレーナーを脱いだ彼を見て、私は心臓が止まりそうになりました。

上半身が傷だらけだったのです。

理由を聞くと「自分でカッターで...」と言う彼が怖くてショックで、しばらく号泣したのを覚えています。

ここで情に流されてしまったら今までと何も変わらない、でも彼のことも心配。

どうすればいいのか何日も何日も本当に悩みました。

そんな時、私が勤めていた会社の男性社員で、何度か食事に行ったことがある人から「付き合ってほしい」と言われました。

これは神様が新しい恋に踏み出せと言ってくれているのだと思い交際することにしました。

そして、新しい彼と過ごしていたある夜、自宅まで車で送ってもらっている最中に、元彼からとメールが来たのです。

「今、家の前に来てる。10分でいいから会いたい」

このままでは家の前で鉢合わせしてしまいます。

やむを得ず彼に事情を話し、近くの公園にいるという元彼の車に1人で向かいました。

車に乗り込むと、力なく微笑む彼が運転席にいました。

切ない気持ちで押しつぶされそうでしたが、もう戻れないことをきっぱりと伝えました。

今まで一度も私の前で泣いたことがない彼が、すがりついて泣きました。

でも、不思議と私は冷静でした。

「もう10分経ったから、帰るね」

しばらくしてそう言うと、彼も泣き止んで顔を上げました。

「わかった。家の前まで送るよ」

そういってゆっくり車をスタートさせましたが、ノロノロと運転する彼を横から見ると、まるで死人のように青白く生気のない顔をしていました。

その時、急に彼が私を巻き込んで事故を起こすつもりかもしれないという予感に襲われ、体が硬直しました。

生まれて初めて感じる「死の恐怖」でした。

家まで数分で着くはずの道のり。

私には、永遠のように長く感じました。

しかし、彼はきちんと家の前で私を降ろしてくれたのでした。

そんな出来事もあり「もう2人だけでは解決できない」と限界を感じた私は、以前から親交のあった元彼のお姉さんに連絡を取り、事情を説明しました。

身内から話してもらうことで冷静になってくれることを祈り、彼の説得をお願いしたのです。

お姉さんは快く引き受けてくれて、そのおかげでついに彼と別れることができたのでした。

数年後、彼が結婚して子どもが産まれたということを知り安心しました。

あの出来事は、私にとって多分一生忘れることができない、切なさも恐怖も一番の恋愛体験だったと思います。

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