ガシャンガシャン...目が合ってしまった「何か」/今宵もリアルホラーで乾杯「夜の体育館」

ディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謡い文句に、ホラートークをしてくれるお客さまを待ちます。今宵は、若手女優の優ちゃん(23)の話、「夜の体育館で見たものは」。『今宵もリアルホラーで乾杯』第12回です。

優ちゃんは高校時代、演劇部に所属しており、夜の体育館で稽古をしていた時の話。1年生のMちゃんは、舞台袖に待機しているBさんが舞台に出たのを確認したら音楽を出すように指示をされていたのですが、「Bさん、舞台袖にずっとうずくまってませんでしたか?」と不思議なことを言い出します。

※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。

【前編】体育館にうずくまる「何か」。みんなは見えて...ない?/今宵もリアルホラーで乾杯「夜の体育館」

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※  ※  ※

【若手女優・優ちゃん(23)の話】

誰が見ても舞台の中央に立っているB先輩に対し、トンチンカンなことを言う後輩のMちゃん。

(Mちゃん、ちゃんと先輩のこと見えてるのかな...?)

「Bさん、舞台袖にずっとうずくまってませんでしたか? もうすぐ出番なのに大丈夫なのかなって思いながら、出るタイミングを見計らってたんですけど、あ、でも...」

そう言って、Mちゃんは息を飲むと黙ってしまいました。

「何、どうしたの?」とB先輩。

「その人、髪がすごく長かったんです。B先輩、ショートヘアですよね...」

Mちゃんのその言葉を聞いた部員たちは、ざわめき始めました。

「うそ、そんなことありえない...」

「舞台にはB先輩しか立ってなかったのに...」

「Mちゃん音響だしブースから見えてたはずだけど...」

B先輩と私たちは、Mちゃんが「誰かを見た」という場所を確認しました。

けれど、誰もいません。

Bさんと一緒に舞台袖にいた先輩たちも、うずくまっている人なんて見ていませんでした。

「でも私、見たんです! 絶対そこにいました!」と、今にも泣きそうなMちゃん。

少しの間、不気味な沈黙が流れました。

「はいはい、この話はおしまい! 続きからやるよ~っ!」

霊感がなく、そういう存在自体を全く信用していないBさんは、不安な表情をしている私たちを一蹴すると、リハーサルを再開させました。

私も精いっぱい気にしないようにして、元の位置に戻りました。

そして、再開してすぐのことです。

ガシャン...ガシャン...。

一層、風が強くなってきたなあと思っていたのですが...。

ふと、気づいたんです、これ、フェンスの音じゃない。

よく聞くと、金属が揺れて擦れ合うような音は、風に揺れるそれとは異なる音でした。

ガシャン...ガシャン...ガシャン...ガシャン...。

その音は少しずつ、私の方に近づいてきました。

なにこれ...やだ...やだ...!)

体育館にはギャラリーと呼ばれる2階部分があり、壁に沿ってグルリと造られています。

私はその真下にいたのですが、金属を擦り合わせたような足音が少しずつ私の真上に近づいてくるんです。

けれど、私以外の人たちは誰もその足音に気づいていないようで、舞台に集中しています。

ガシャン...ガシャン...。

足音はすぐ真上にまで迫っていました。

(怖い、逃げ出したい!)

と思いましたが、再びリハーサルを止めるわけにはいきません。

舞台はクライマックス。

派手な音楽とともに先輩たちが熱演しています。

けれど、私の耳には不気味な足音しか入ってきません。

私はギュッと拳を握りしめ、目を固く閉じて下を向いてやり過ごすことにしました。

ガシャン...ガシャン...ガシャン...ガシャン...ッ!

足音は私の真上でピタリと止まりました。

舞台はいつの間にかクライマックスを過ぎ、静寂の中、B先輩が一人で語るラストシーンに変わっていました。

私は相変わらず目を閉じて下を向き、様子を伺っていました。

けれど、足音が聞こえることはありませんでした。

(よかった...)

とホッと胸をなでおろした、その時です。

サワッ...と私の後頭部に何かが触れる感触がしました。

驚いた私は、とっさに目を開け顔を上げてしまったんです。

「ヒッ...!!」

目の前にあったのは、逆さまになった人の顔でした。

ざんばらな髪が逆立ち、ギロリと血走った目で私を凝視し、口から泡のような血を垂らし、ひどく顔を歪めた落ち武者。

その表情は、「身の毛もよだつ」という言葉では足りないほど恐ろしいものでした。

私はそのまま気を失いました。

その後、気づくと家のベッドに寝かされていました。倒れたあと、両親が迎えに来てくれたようです。

幸い大事には至らならなかったので、都大会も無事に参加することができました。

けれどその事件の後、私はどうしても夜の体育館に近寄ることができなくなり、翌年の都大会の稽古の時は「絶対に日暮れまでに終わらせてほしい」というワガママを言わざるを得ませんでした...。

そして今でも、逆さまの落ち武者の形相が忘れられずにいます。

※  ※  ※

「今でも時々、あの顔が夢に出て来るんです...」

優ちゃんの額が汗でしっとりしている。

「それは厄介ね」

「いろいろ経験してるんですけど、たぶんこれが一番衝撃だったかもしれないです」

「けどさ優ちゃん、すっかり舞台やTVのお仕事が多くなったでしょ? それこそ人が集まる場所ばかりだから、いろいろと大変なんじゃない?」

「はい。けど、この世界って霊感がある人のほうが『売れる』って言いませんか?」

「え、そうなの?」

「はい。なんか、独特のオーラが出るって言われたり。なので怖いのは嫌ですけど、うまく使いこなせるなら、むしろラッキーって思うようになりました」

そう言って、天使のような微笑みを見せる優ちゃん。

さて、ウォッカカクテル「アンジェロ」を一杯どうぞ。アンジェロはイタリア語で「天使」という意味よ。

さすが女優さんは、根性が違うわ。

【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/「悪夢の道」
誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/「祓っちゃだめ!」
え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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著者:えむ
スナックを経営。独自にリサーチした都内のオススメ酒場は多数。夢はおんな酒場放浪記に出演すること。

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