<この体験記を書いた人>
ペンネーム:むらまゆ
性別:女
年齢:44
プロフィール:専業主婦。46歳の公務員の夫、17歳の子どもがいます。私は4年前まで働いていました。夫とは職場結婚です。
私は高校卒業から21年間働いていました。
多くの上司と仕事をしましたが、今でも心に残っているのは、就職したての18歳の時に出会った上司(男性、当時30代前半)Aさんのことです。
Aさんがいなかったらもっと早く退職したと思うほど、私の社会人人生で一番影響を受けた方です。
最近夫が役職者になり、部下との関係に悩んでいる話を聞いた時、真っ先にAさんを思い出しました。
忘れもしない1995年4月1日、大きいホールに集められて、配属先は病院(現在はありません)と言われた私は病院に連れられて行きました。
そんなことあるの? と思う人もいるかもしれませんが、本当に「連れられて」がしっくりきます。
なにせ、事前に何も説明がありませんでしたから。
いきなり4月1日から医療事務員として窓口業務、レセプトの作成、その他病院の事務をやることになりました。
基礎知識がまったくなかった私は毎日残業ばかりで、帰りはいつも最終電車。
日の光を見ることなく一日が終わることがほとんどでした。
しかし同僚の人に仕事も教えてもらい、何とかできるようになりました。
配属されてすぐの頃、窓口対応中に相手の人が私の対応に怒りだしたことがあります。
一生懸命説明をしましたが理解してくれずイライラしはじめ、もう手詰まりというタイミングで表れたのが、係長だったAさんです。
Aさんは相手の方の話を聞き、よどみなく説明をして事を収めてくれました。
その後、先輩からこんなことを聞きました。
「Aさんはずっとあなたの応対を見ていて、手に負えなくなって相手が怒鳴る寸前のタイミングを見計らって出てきたんだよ。すぐ出てもよかったけど、それだとあなたが成長しないと思ったからじゃない。本当にすごいね」
その後、Aさんからもお話がありました。
「応対はまあまあです。相手は病気の人だから、説明は短く簡潔するよう考えること。いきなり配属されて戸惑っているとは思うけど、精一杯バックアップはするから」
実は高校時代はバイト禁止で働いた経験がなかったため、すべてがゼロからの出発でした。
優しさの中に厳しさ、そして的確な指示をいただき、上司と部下としては2年間でしたが、社会人としても人間としても成長できた大切な時間でした。
社会人2年目に新しい仕事を任されました。
その時、Aさんから言われた言葉は今でも覚えています。
「分からないことがあれば必ずこう聞くこと。『自分はこう考えましたがこの考えで正しいでしょうか?』。自分で考えないまま聞いてきても、絶対に答えないからね」
分からないことを分からないままにして仕事を遂行しても迷惑をかけるだけ、しかし分からないからと安易に聞いたら、学校の宿題で答えだけを写す行為と同じだと。
まず考え、それが正しいかどうかを確認して実行すること。
答えをどうやって導き出すかが一番大事なのだと気づかされました。
その後の仕事でもこの考えは非常に役に立ちましたし、退職後もいろいろな場面でこの考えは役に立っています。
21年間の社会人人生でいろいろな上司と出会いました。
とても優しいけど繊細すぎて壊れてしまった人、部下をいじめるのが大好きな人、権威や地位にしがみついて部下は駒としか思っていない人、贔屓ばかりする人。
その中で最高の上司は? と聞かれたら真っ先に答えます。
社会人1年目の時に、優しいだけではなく仕事に対してはすごく厳しかったAさんのことを。
関連の体験記:なぜ、外に出た...? 雨の日にずぶ濡れで帰宅し、亡くなった認知症の母。思い当たる理由に涙が...
関連の体験記:最期までお母さんらしかったね。お疲れ様でした。ありがとう。
関連の体験記:離婚した娘の子供の面倒を見る私。叱りつけた孫が持ってきた「あるもの」に涙が...
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。