「この腫瘍はガンっぽい顔をしてる」医師に告げられた私と、運命の日までの「我が家の長い一週間」

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:サンクチュアリ
性別:女
年齢:52
プロフィール:定期健診の結果、私の体内に腫瘍が見つかりました。

「この腫瘍はガンっぽい顔をしてる」医師に告げられた私と、運命の日までの「我が家の長い一週間」 20.jpg

今から数年前のことです。

定期健診で私の体に腫瘍が見つかり、その形状から「ガンの疑いあり」と医師から告げられました。

腫瘍が見つかったのは甲状腺。

のど仏の下にある、新陳代謝を促すホルモンを分泌している器官です。

この甲状腺に腫瘍が見つかるのは、女性にとっては珍しいことではないそうです。

しかし、私の場合は腫瘍の「形状」が問題となりました。

「この腫瘍はガンっぽい顔をしている」

そう感じた医師の判断のもと、検査が行われることになったのです。

検査方法は細胞診断。

甲状腺内の腫瘍に直接針を刺して細胞を採取し、それを特定の検査方法で判別する、というものだそう。

一般的に甲状腺に腫瘍が見つかっても、ほとんどの場合は良性だそう。

深刻な事態になるのは、全体の5パーセント程度だと聞かされました。

しかし、本人にとって「5パーセント」は無視できない数字です。

加えて、偶然にもこの少し前に、甲状腺ガンで亡くなった方の話を聞く機会があり、楽観なんてまったくできませんでした。

いろいろ考えても、一週間後に出る検査結果を待つほかありません。

...そこからが、長い長い一週間の始まりでした。

まずは家族に伝えることからスタート。

夫は平静を装っていますがそこは夫婦。

夫の辛い気持ちが手に取るようにわかります。

次に娘。

呆然としつつ「大丈夫だよ~、絶対」と軽口を叩いています。

しかし、「驚いて焦って、自分が何を言うべきかわからない」という顔をしていました。

そして孫。

まだまだ幼いため、もちろん何も伝えません。

ただ抱きしめながら「愛してるよ」と心の中で伝え続けます。

無邪気な孫たちの顔を見ていると「まだまだそばで見守りたい」との願いが頭をもたげ、思わず涙が出てきました。

しかし、感傷的になってばかりはいられません。

万が一ガンだった場合、即入院&手術となります。

だから、その時に困らないだけの準備をしなければいけません。

実は私、これまでも何度か手術の経験があり、段取りは頭に入っています。

夫と娘には現実的なこと...たとえば通帳・現金・保険や実家への連絡などについて引き継ぎをしておきました。

さらに娘には、私の代わりにやるべきこと、家事やら夫のサポートについて説明しておきました。

次にやっておいたのが手紙を書くこと。

これは夫に託すことにしました。

大切な人たちに向けて感謝の思いを綴りました。

この間、およそ3日間。

これらを進めるうちに、いくらか冷静さを取り戻し、その後は達観? 悟り? そんな心境で過ごすことができました。

そんな私とは対照的に、家族は浮足立った様子。

夫なんて時に泣きそうな顔に、時には苛立った様子を見せて、どう見ても平常心ではありません。

娘はいつも通りとは言えませんが、夫に比べると「やるべきこと」が分かっている様子です。

「女の子は頼りになる」と言いますがホントですね。

そうこうしているうちに運命の日を迎えました。

夫と共に病院に向かい、医師から呼ばれ、説明がスタート。

すると、明るい表情の医師から「がんの疑いなしでしたよ」と告げられました。

この瞬間、夫は歓喜。

私は全身から力が抜け、椅子に座ることさえやっとな感じでした。

きっと極度に緊張していたのでしょう。

その後、定期検査をづづけること数年。

ようやく「悪性への変異の心配なし」といえるところまで来ました。

「ガンの疑いあり」

こう告げられた途端、目の前が真っ黒になった私。

しかしこの経験が私にもたらしたのは、「自分が幸せに包まれている」という確信でした。

これからも自分を大切に、家族を大切に、日々への感謝をかみしめながら毎日を生きたいと思います。

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