コロナ禍でも口紅が大ヒット! 「リップモンスター」が女性の心をアゲるワケ

リップモンスターを集めたくなる理由

しかし私は、「リップモンスター」がコロナ禍にバカ売れしたのは、機能性に加えて、消費者の「感情」を大きく動かしたことが要因だと考えています。

シンプルに言うと、リップモンスターを買うことで気分がアガったのです。

知人の女性ライターは、ネットで噂になっているのを知って「一度試してみようかな」と思い購入。すると使用感も良いので気に入ってしまい、すでに何本もコレクションをしているそうです。

彼女いわく、カラーバリエーションが豊富で、ネーミングも個性的なので買うこと自体が楽しいのだそう。その結果、さまざまなカラーをついつい買ってしまい、中にはまったく使っていないものもいくつかあるとのこと。にもかかわらず、ドラッグストアでは未だに品薄なので立ち寄るとついKATE の棚を覗いてしまう。見つけると「あった!」と嬉しくなって、またつい買ってしまう......らしいです。

人は「ない」と思うと欲しくなる生き物。「品切れ続出」の状態になると、値段に関係なく欲しいという人が現れます。人間の心理というのは不思議なものですね。

また、彼女が言うように「カラーバリエーションの豊富さ」「個性的なネーミング」も、この商品の購入が「アガる」ことにつながっていることは確かです。

何本もコレクションさせてしまう魔法のネーミング

私がコピーライターとして、この商品の肝だと感じたのはネーミングです。

まずは「リップモンスター」という名前。

ネーミングにモンスターを用いると大ヒットに繫がることがあります。たとえば台湾のかき氷店「アイスモンスター」や、エナジードリンクの「モンスターエナジー」のように、一種のパワーワードと言えるかもしれません。ただし、これまで化粧品のような女性的な印象が強い商品につけることは、まずありませんでした。

だからこそ、そのインパクトは絶大でした。口紅というアイテムで、商品名がこれだけ前面に出て認知されているものはなかなかありません。

コピーライティングの肝として「合わない言葉を組み合わせることで化学反応を起こす」というテクニックがあります。

「リップ」と「モンスター」の組み合わせはまさにこれです。

 

川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC 賞など受賞歴多数。現在は、広告制作にとどまらず、さまざまな企業・団体・自治体などのブランディングや研修のサポー ト、広告・広報アドバイザーなどもつとめる。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(いずれも角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)、『江戸式マーケ』(文藝春秋)、『売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください!』(SB 新書)など多数。

※本記事は川上徹也著の書籍『高くてもバカ売れ! なんで? インフレ時代でも売れる7の鉄則』(SBクリエイティブ)から一部抜粋・編集しました。
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