コロナ禍でも口紅が大ヒット! 「リップモンスター」が女性の心をアゲるワケ

商品名にストーリー性を内包

KATE の開発担当・宗田杏樹さんのインタビューによると、この「リップモンスター」という製品名は「とにかく落ちにくそう、なんだかスゴそうという最強感、貪欲な期待感を思わせる名前」として考えたといいます。そこから転じて「モンスターが住む世界って、こんな感じ」とストーリーを深めていき、個々のカラーの名前もその世界観からイメージしていったそうです。

そう、「リップモンスター」がすごいのは、全体のネーミングだけでなく個々のカラーのネーミングにもストーリーが感じられるという部分です。

たとえば「憧れの日光浴」というカラーは、「普段は夜に活動しているモンスターにとって太陽は縁遠いもの。でもだからこそ、日光浴に憧れていて......というストーリーをのせた、フレッシュなオレンジカラー」と説明されています。「水晶玉のマダム」は「水晶玉の中に住んでいる真っ青な顔のマダムでも、この色を塗ればたちまち血の気が蘇るはず、という色」。「ラスボス」は「肌トーンを選ばず、どんな人も掌握する色。他のカラーが敵視する存在、ということから名付けました」とのこと。

ネーミングだけではもちろん、説明を読んでも「じゃあ、どんな色なの?」とわかりにくいのですが、そこが逆にいい。1本買うと、なんとなく他のカラーも気になってくるというわけです。

発売された時期が、コロナ禍であることを考えれば、「マスクにつかない口紅」というのはかなり重要なスペックであり、この機能だけを打ち出すような売り方もできたに違いない。

しかし「リップモンスター」はそうしませんでした。

閉塞感のある状況で、人々の意識がリップメイクから遠ざかっていたときに、あえて最強感というか、「とにかく強い」という世界観を打ち出す。

その逆張りのような戦略によって消費者の感情を動かし、再び口紅というものにフォーカスさせた。抑圧された状況下で、「リップモンスター」を買うことでつかの間の気分をアゲた女性は多かったに違いありません。

それが爆発的なヒットにつながったのでしょう。

 

川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC 賞など受賞歴多数。現在は、広告制作にとどまらず、さまざまな企業・団体・自治体などのブランディングや研修のサポー ト、広告・広報アドバイザーなどもつとめる。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(いずれも角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)、『江戸式マーケ』(文藝春秋)、『売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください!』(SB 新書)など多数。

※本記事は川上徹也著の書籍『高くてもバカ売れ! なんで? インフレ時代でも売れる7の鉄則』(SBクリエイティブ)から一部抜粋・編集しました。
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