SNSの普及が、新たなストレス源になっている――。「世界が尊敬する100人」に選ばれた禅僧・枡野俊明住職はそう指摘します。SNSに振り回されず、穏やかに生きるためには、どうすればよいのでしょうか。そこで、住職の新刊『何を言われても「平気な人」になれる禅思考』(扶桑社)より、繊細な人が傷つかずに暮らすためのエッセンスを連載形式でお届けします。
SNSに疲れたら〝冬眠する〟
唐突ですが、松尾芭蕉にこんな一句があります。
おもしろうて やがてかなしき 鵜舟かな
赤々と燃えるかがり火のもとでおこなわれる鵜飼は、華やかで趣き深いものだが、鵜飼(うかい)が終わって、かがり火も消え、あたりが闇におおわれると、そこはかとないかなしさに包まれるものだなぁ、ということでしょう。
この句に倣(なら)えば、SNSについてこんなふうにいえるかもしれません。
「おもしろうてやがて気重なSNS」
相手の顔は見えないものの、会話のように言葉のやりとりができるSNSは、やってみるとたしかにおもしろい。「これは便利だし、楽しいじゃないか」。けっこうはまる人も少なくないのではないでしょうか。
しかし、やりとりがあまりに頻繁になると、少し気が重くなってもくる。「また、きた。返信しなきゃ。返信したら、またくるんだろうな、あ~あ」というわけです。実際、SNS疲れという〝症状〟はあるようです。
疲れたときは休息がいちばんです。しかし、LINEがきてもほったらかしにするのは、どこか相手に申し訳ない気持ちになるでしょうし、へたをすれば相手との関係がギクシャクしたものにならないともかぎりません。
休息することを伝える配慮は必要です。その伝え方ですが、「しばらくLINEはやめる」というのではそっけないですし、相手も一方的に突っぱねられたようで、気分のいいものではないでしょう。疲れたときは、こんな宣言をしたらいかがでしょう。
「今日から一週間(一〇日間、一カ月......)冬眠します。LINEは届きません。よろしくね」
これなら、相手から「OK。冬眠明けを待ってるよ」といったLINEがきて、心おきなく休息に入れるはずです。
ときにはSNSのない生活をする。わたしはそれを「SNSデトックス」と呼んでいるのですが、SNS漬けの日々のなかでたまった〝心の毒素(ストレス、疲れ)〟を抜くことは大事なことだと思っています。
〝冬眠〟の間に、どれほど多くの時間をSNSにかけていたかがわかって、使い方を反省することにもなるでしょうし、なにより、SNSから離れて、静かな、落ち着いた時間をすごすことの心地よさにも気づくでしょう。
「安閑無事(あんかんぶじ)」
そんな禅語があります。何ごともなく、安らかな心、穏やかな心ですごす日々(時間)にこそ、ほんとうの幸せがある、という意味です。禅語がいうその世界をぜひ体感していただきたいのです。
つねにスマホを気にしていたのでは、絶対に味わえない時間、すばらしい時間がそこにあります。テクノロジーの進化のなかに置き忘れてきた、生きている「素」の喜び、幸せが感じられるといってもいいでしょう。
人にはそれぞれ生活スタイルがありますから、どうしても〝冬眠〟するのは難しいというケースもあると思います。その場合は、スマホを使う時間に制限を設けたらいかがでしょうか。
「午後九時以降はスマホに触らない生活を始めます、みなさん、ご協力よろしくお願いします」
こちらはそんな宣言をすればいいですね。当初は時間外にLINEを送ってくる人がいるかもしれませんが、「対応せず」を徹底していれば、すぐにも周囲が受け容れて、〝新生活〟は安定します。
「SNSデトックス」で静かな時間を手に入れる
その他の「何を言われても「平気な人」になれる禅思考」記事リストはこちら!
5つの章にわたって、「繊細な人が傷つかないための41の教え」を掲載。SNSでも実生活でも「何を言われても平気な人」になるためのヒントが満載です。