窓断熱で医療費も削減⁉ 住宅内の温熱環境が及ぼす影響とは

住まいの環境が健康に影響し、きちんと断熱すると医療費削減にもつながるとしたら...? 住宅設備機器業界大手のLIXILが2024年1月16日にセミナーを開催し、近畿大学 生物理工学部 人間環境デザイン工学科の藤田浩司准教授が「住宅内温熱環境と居住者の健康」についての研究成果を解説されました。そのなかで、注目したいポイントをご紹介します。

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日本の住宅の約9割が現行の省エネ基準以下

断熱性が低い住環境では、寒い冬には入浴中や夜中のトイレでのヒートショックによる事故の危険性が高まります。また、住宅と健康に関する様々な研究が行われ、断熱性が高い住宅に住んでいる人ほど心疾患、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などが改善されることがわかっているそうです。

研究データが蓄積され、2018年にはWHOが「住宅と健康ガイドライン」を発表。健康を害さないために冬季の室内温度は18℃以上が推奨されています。

ところが、47都道府県のうち「冬季の在宅中平均居間室温」が18℃以上なのは、北海道(19.8℃)、新潟(18.4℃)、千葉(18.3℃)、神奈川(18.0℃)だけ。ほとんどが18℃に満たない状態なのだそう(※1)。私たちは知らず知らずのうちに、寒い部屋のなかで生活しているようです。

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なぜでしょう。それは、1999年に作られた現行の省エネ基準を満たしている住宅は13%。日本の約9割もの住宅が、基準を満たしていないからだといいます。(※2)

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※1)出典;日本サステナブル建築協会
※2)出典:社会資本整備審議会 建築分科会資料(2021年国土交通省)

断熱性能を高めるには、窓リノベ

では、断熱性能を高めるためには、どこをリフォームするのが効率的なのでしょう?

冬の暖房時の熱損失が最も高いのは、窓や玄関などの開口部。約58%の熱がここから逃げてしまっているそう。ほか、換気や外壁からそれぞれ15%、床が7%、屋根が5%となります。(※3)。

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「まず窓から断熱性能を上げていく必要がある」と、藤田准教授。
しかし、"省エネ"というキーワードだけでは、お財布事情もありなかなかリフォームに踏み切れないのが多くの家庭の実情では。そこで、"健康への影響"を「医療費削減」という形で示すことで分かりやすくし、リフォームを後押ししたいというのが藤田准教授の研究です。

※3)出典:(一社)日本建材・住宅設備産業協会省エネルギー建材普及促進センター「省エネ建材で、快適な家、健康な家」

医療費算出で、窓リノベの経済効果をパーソナライズ化

藤田准教授は、住宅モデルと暖房時間の設定、家族構成と滞在室の設定、住宅内温度を計算するなどして医療費をシミュレーション。発病する確率と患者1人あたりの医療費を掛け合わせ、「医療費(期待値)」を算出することができるそう。

こうした研究は、パーソナライズ化した窓リフォームの経済効果(光熱費・医療費の総額)が、机上で算出できるようになるそうです。
例えば、最も多い1980年の基準住宅において、50歳夫婦と子ども2人(18歳と15歳)の家族を想定して内窓改修の医療費期待値と暖冷房費の削減額を算出すると、30年後には98万円の削減につながるという結果が出るのだとか。
「光熱費だけでは73万円の削減ですが、医療費期待値が加わることで1.34倍の効果になることが分かりました」(藤田准教授)

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また、以下の現行の省エネ基準で建てられた戸建住宅でも、高断熱化することで、30年で58万円の削減につながることが分かるそうです。
こうした計算式は、LIXILのホームページで簡易版を公開していく予定もあるのだとか。

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現在、2050年のカーボンニュートラルを目指し、国を挙げて様々な施策がされています。断熱改修するリフォーム工事に補助が出る「先進的窓リノベ事業」も、昨年に続き2024年も継続中。LIXILでは、こうした後押しにより窓断熱商材の売り上げは3倍に増加。窓リノベにより、冷房費も下がった、外の音が聞こえなくなりテレワークがしやすくなったという声も上がっているそうで、注目度の高さがうかがえます。
内窓を設置するだけのリフォームで断熱性能が上がり、省エネやCO2削減はもちろん、自身の健康にも良い影響をもたらすと考えたら...、今がリフォームのチャンスだといえそうです。

 

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