『70歳からのブログ』のブロガー・のぶっちさんの才能は多彩。書道指導歴38年という自身の作品を表装したいと、70歳のときに軸表装を習い始めた。ブログにも美しい書が登場する。
のぶっちさん(78歳)に聞く
60歳でパソコンを習得し、70歳でブログを始めた「のぶっち」さん。基本的に毎日更新し続け、今年で8年目を迎える。70歳でブログを始めたことも驚きだが、毎日更新することも並大抵のことではない。しかも、のぶっちさんは書道を教え、表装を習い、パソコンと雑学の勉強会『ゆのみカフェ(You Know Me Cafe)』をも主宰している。そんなのぶっちさんに、普段の生活の話も交えながら、ブログに対する思いを聞いた。
60歳でパソコン事始め
パソコンを始めたきっかけは何ですか?
「60歳だった1998年から2年間、中国のある大学の日本語講師として単身中国に渡りました。家族との連絡に、手紙でのやりとりでは時間がかかりますよね。電話だと料金が高い。そこでITに詳しい三男の指導でタッチタイピングを習得し、メールで連絡を取り合うことにしたのです。当時は未だ、メールといえば電子メールと言われていた時代でした」
パソコンを習得し、さらにブログを始めようと思ったのはなぜですか?
「中国から帰国後、高校講師だった亡き夫と共に、三男夫婦の協力も得て自宅で勉強会『ゆのみカフェ(You Know Me Cafe)』を始めました。対象は60~80代の男女数人で、今ではみなさん年賀状の作成をはじめ、ワードやエクセルはずいぶん使えるようになりました。でも、もっとパソコンを使いこなしてほしい、インターネットの楽しさを知ってもらいたいと思い、まず私自身が率先してブログを始めようと思ったのです」
のぶっちさんのブログ『70歳からのブログ』
読む人のことを考えて書く
Q:ブログをする上で、気をつけていることはありますか?
「読む人のことを考えて書くことです。私の知人はもちろん、世界中の誰もが読みうるということを念頭においています。それはつまり、いらだちや怒りといった自分の感情を、あからさまに表さないということです。怒りや批判を感情のまま表現しては、品性がないですから」
Q:大変なことは何ですか?
「ブログを始めて8年目になりますが、同じ言葉は使わないようにしています。それが大変ですね。多くの人はメールやSNS、ブログをするときに絵文字や顔文字を使いますが、私は使わないことにしています。私はすべての感情を言葉で表現したいと思っているんです」
Q:ブログをしていて楽しいこと、嬉しいことは何ですか?
「実は、書くことが思い浮かばなくて困ることがあるんです。そんなときは1時間半位歩くんです。歩きながら心の中を見つめていると、気持ちが落ち着いて書きたいと思うこと見つかるんです。またブログは、夕食の後、「さて」と机に向かって書き始めます。これが私の生活のリズムになり、毎日を有意義に過ごせていると思いますね」
Q:息子さんたちもブログを読んでいますか?
「どうでしょう(笑)。特に話題にはしないので。ただ、口頭で話したことのないことを次男が知っていたことがあり、「あ、読んでくれたんだな」と思ったことがあります。時々は読んでくれているのかもしれませんね」
Q:フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどのSNSもしていますか?
「私はしないことにしているんです。あれもこれもとすることや、外出先でも頻繁に携帯やスマートフォンをチェックするのは、人よりもコンピュータが優位になっているような気がして。だから私はブログだけ。人に勧められることもありますが、『私は私でいい』と思うんですよ」
のぶっちさんが主宰する勉強会『ゆのみカフェ』で作成した『反対語辞典』。市販の書籍や資料からよく使う言葉を選んでまとめたもの。
Q:最後に、のぶっちさんは70歳でブログを始めましたが、年齢に関わらず新しいことに挑戦することについて、どう感じていますか?
「よく『のぶっちさんは元気だからできるのよ。私はダメよ、もうそんな元気ないわ』と言う人がいるんです。私は『いろいろやっているから元気なのよ』と言いたいんですよ。新しいことをやってみようと思わないのは、残念なことに、やってみたいと心を動かされることがないからだと思います。でも、もし心を動かされることに出合ったら、ぜひやってみるといいと思うんです。きっと何年も続く趣味になると思いますよ」(老友新聞社)