2023年1月スタートの「生前贈与」の新ルール。年内から始めた方が得なのか【税理士の山本先生が指南】

節税を考えるならどの制度を使うべき?

生前贈与には、もう一つ「相続時精算課税」という制度を用いる方法も。

下で紹介しているように、今回の法改正でこの制度も変更されるのですが、今後「使いやすくなる」とも言われています。

ただ山本先生は「『使いやすくなる』と言うと、誤解が生まれます。

節税を目的にするなら『相続時精算課税』は条件が限られる上に、専門家のアドバイスも必要です。

節税目的なら、これまで通り『暦年贈与』を用いるのがよいでしょう」と話しています。

まずは財産の正確な額を知り、事情に合った贈与や相続ができるようにしたいですね。

暦年贈与と相続時精算課税、どちらがお得?

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(1)相続時精算課税の変更点
「相続時精算課税」とは、ある時点で税務署にこの制度を利用することを申請することで、贈与する人が亡くなり相続が発生した際に、それまでに贈与した不動産や有価証券などを含む資産の申請時の価格と相続財産から相続税額を計算して、一括して相続税を納める制度です。この制度では累計2500万円までは特別控除となり、非課税で贈与することが可能になります。
「国は生前に贈与する場合でも相続する場合でも一律の税額になることを目指しています。そのため2003年からこの制度を施行したのですが、運用が複雑で、さらに一度『相続時精算課税』を申請すると二度と『暦年贈与』を行うことができないという側面があるため、広まっているとは言えません。その対策として、今回の法改正で2024年1月より、『相続時精算課税』を利用した際には特別控除とは別に年間110万円以内の贈与は贈与税も相続税もかからないという"おまけ"を付けることにしたのです」(山本先生)

(2)相続時精算課税のメリットは?
山本先生は「もし節税を目的とするなら、ほとんどの人は『暦年贈与』一択になります」と話します。
さらに「節税の観点から『相続時精算課税』によるメリットを受けられるのは、同族経営の会社をお持ちのような限られた人たちになります。この場合は、利益を上げ続けていれば株式の価格も相続時には上昇していることが考えられるため、『相続時精算課税』を利用して節税を行うことも可能です」と続けます。

(3)暦年贈与を選ぶ際の注意点は?

節税を目的とするなら、多くの人は「暦年贈与」を選ぶ方がよさそうです。
「ただし注意点もあります。『暦年贈与』を利用する場合には、贈与を行ったという証拠を残しておかなければ、後で贈与とは認められずにその金額分を相続財産に加算されてしまう恐れがあります。贈与を行う日付、金額などを明記した双方の署名捺印入りの書面を残しておくようにしましょう。複数回をまとめてではなく、贈与を行う度に書面を用意することが必要です」(山本先生)

構成・取材・文/仁井慎治 イラスト/やまだやすこ

 

<教えてくれた人>

山本宏税理士事務所 所長/税理士
山本 宏(やまもと・ひろし)さん

1968年生まれ。95年11月税理士登録。中小企業、個人事業主や不動産オーナー向けの税務申告、会計指導などに加え、個人向けに贈与・相続にまつわる総合的なサポートも行う。

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