おばあちゃんが認知症になった日。忍び寄る認知症と「変化の兆し」/認知症ポジティブおばあちゃん

「介護」と聞くと「大変そう、辛そう」というイメージを抱く人も多いのではないでしょうか。しかし、そんな印象を覆すほど"ゆかいな介護生活"を送っている家族がいます。介護従事者や在宅介護に悩む人々から支持を集めるYouTubeチャンネル『認知症ポジティブおばあちゃん』を運営するだんだん・えむさんです。今回はそんな彼女の初著書『認知症ポジティブおばあちゃん~在宅介護のしあわせナビ~』より一部抜粋してご紹介。元気をくれてタメになる一冊です。

※本記事はだんだん・えむ(著)、遠藤 英俊(監修)の書籍『認知症ポジティブおばあちゃん~在宅介護のしあわせナビ~』から一部抜粋・編集しました。

【前回】準備は3時間前から! 認知症おばあちゃんの「お出かけ前奮闘記」

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忍び寄る認知症。変化の兆し......

ぶつけたのはこれで何回目?

「アレ、おばあちゃん最近おかしくない?」

家族がざわつきはじめたのは、2014年頃のことです。

車をぶつける回数が増えるなど、運転が目に見えて荒くなってきたのです。

認知症というと「何度も同じことを話す」「会ったばかりの相手のことを忘れる」「ご飯を食べたことを忘れる」「徘徊する」といった症状がよく知られていますが、おばあちゃんの場合は、ヒヤッとする車の事故が増えたことが違和感を持つきっかけになりました。

75歳以上になると、基本的に3年に一度の免許更新で認知機能検査を受ける必要があります。

おばあちゃんは検査を受けた上で運転していましたし、ちょっとした不注意があるのは昔からでした。

スーパーの駐車場で他人様の車に軽くぶつけてしまったこともあったので、はじめはその延長ぐらいに思っていたのですが......。

ある時から、送り迎えで人を乗せているときに車をぶつけたり、自転車に軽く接触してしまったりと、一歩間違ったら大変な事態になりかねないと思われる事故が続き、私と夫は真剣に考えるようになりました。

とはいえ、本人に運転をやめるよう説得しても「注意すれば大丈夫」というばかり。

やむをえず私たちが車の鍵を隠せば、頭から湯気がでるほどカンカンに怒って大騒ぎになってしまいました。

家族が不安を感じる中で運転を続けていたおばあちゃんですが、ついにある日、車のドアが凹んで開かなくなるほどにぶつけて帰ってきたのです。

大事故につながらなかったことが本当に不幸中の幸いでしたが、車は廃車になりました。

さあ、これで本人も免許を返上する気になるか、と期待したのですが、この期に及んで「新しい車を買おう」と言うのです。

わが家は田舎にありますから、どこに行くにも車が足がわりという生活。

「車のない生活なんて考えられない」というおばあちゃんの気持ちもよくわかります。

私たちもおばあちゃんに違和感を抱きつつ、まだ認知症になっているとは思っていませんでした。

むしろおばあちゃんから車を取り上げることで行動範囲が狭くなり、老化が加速するのではないかという心配もあったのです。

「車はもう危ないよね」「でも取り上げたら一気にボケちゃうかも......」家族で葛藤を繰り返した末、新しい車を買ってしまいました。

ですが、おばあちゃんは結局その車を運転できなかったのです。

というのも、スマートキーの扱いを覚えることができなかったから。

こうしてやっと免許を返納しました。

このときにはすでに判断力が鈍り「新しいことが覚えられない」という認知症の兆しがあったのです。

 
※この記事は『認知症ポジティブおばあちゃん~在宅介護のしあわせナビ~』(だんだん・えむ/フォレスト出版)からの抜粋です。
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